大正時代ならではのビジュアル性が...
実際、ヘアケアブランド「シュワルツコフ」で知られるヘンケルジャパン(東京都品川区)が2020年3月に発表した調査結果によれば、鮮やかなカラーを取り入れた「派手髪」をオーダーする人は、昨年より3.6倍増加しているという。この発表内で、ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓さんは派手髪流行の背景として、職場での自由な服装や髪型を認める企業の増加のみならず、アニメやゲームなどを原作とした3次元の舞台コンテンツ「2.5次元」文化、そして「鬼滅の刃」の流行などを指摘した。
前述のビナ薬粧の磯島さんは、「鬼滅の刃」のビジュアルの「取り入れやすさ」に注目する。
「漫画の舞台は大正時代。大正時代は、和装と西洋からのモダンさが入り混じった文化ですよね。その融合したビジュアルが、現代の若い女性を中心とした方々に新鮮に、斬新に感じられたのではないでしょうか。登場人物一人ひとり、髪型や衣装、アクセサリーなど個性的で、凝っている。特に、髪型は、現代のトレンドも取り入れて真似しやすく、推しキャラになりきってSNSにアップするという、現代の流れにうまくマッチしたのではないでしょうか」
また、美容師らも「鬼滅の刃」のビジュアルやファッションに注目している。19年8月から「鬼滅の刃カラー」のオーダーを受けているという、渋谷で美容師を務める志賀尚之さんは、こう述べた。
「鬼滅に登場するキャラのヘアは、グラデーションのデザインが多めだったり、セクションカラーや、裾カラーなど、2次元から3次元の現実に落とし込んでも素敵なヘアが多く、真似したいと思う要因が多かったのではと思っております」
井上さんも、派手にはなりたくないけど色は入れてみたいと思っている人は多いとし、黒からのグラデーションなど「派手すぎないけどオシャレなカラー」が取り入れやすかったのではないかと考察している。