高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
日銀と金融機関の関係性 マイナス金利ばかり強調されるが...

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   日銀は2020-22年度までの3年間の時限措置として、経営統合を決めた銀行などの当座預金の残高年0.1%の上乗せ金利を支払い、事実上の補助金を出すという。

   日銀はマイナス金利政策をとっているとしばしばいわれているが、その実態はあまり知られていない。マイナス金利という言葉だけが一人歩きしている。

  • 日銀が「地銀再編」に乗り出した
    日銀が「地銀再編」に乗り出した
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業務は「金融政策」と「銀行監督機能」

   日銀と金融機関との間はいろいろな取引がある。日銀は金融機関に貸し出し、金融機関から当座預金を受け入れる。金融機関への貸付金利はもちろんプラスだ。金融機関からの当座預金金利も実はほとんどプラスである。ごく一部の当座預金金利だけがマイナスである。

   金融機関への貸付金利は基本的に0.3%だ。金融機関からの当座預金金利は、当座預金456.7兆円のうち208.1兆円は0.1%、218.6兆円は0%、30.0兆円がマイナス0.1%だ。

   マスコミ報道であれだけマイナス金利が強調されているが、貸付金利はプラス、当座預金のうちわずか6.5%だけがマイナス金利だ。

   民間企業の人ならば、銀行の当座預金に金利が付されているのは奇妙だろう。当座預金は現金代わりなので、民間企業から民間金融機関への当座預金の金利は0%だ。というわけで、日銀当座預金で付利されている金融機関は日銀から「小遣い」をもらっているのと同じだ。その金額は、毎年2000億円にもなる。

   その仕組みを使って、今回日銀が地銀再編という「産業政策」に乗り出した。

   日銀の業務は、大きく分けて二つだ。一つは金融政策、もう一つは銀行監督機能だ。今回のスキームは、後者に基づくもので、財務省と金融庁のサポートなしではできない。

   財務省と金融庁も今回の日銀スキームへ同意しているが、業務拡大に野心のある日銀のお手並み拝見というところだろう。

   地銀再編はかなりデリケートな案件なので、財務省、金融庁、日銀でそれぞれリスク分散した格好だ。

今回の「日銀スキーム」は

   こういう政策は、これまで財政資金を使って金融庁が行っていた。日銀が付利すれば、その分日銀納付金が減るので、日銀が財政資金を使っているのに等しい。今回の日銀スキームは、財政収入を減少されるので、いわゆる「租税歳出」と言われるタイプで見かけの財政拡大にはならない。財政資金を使うとなると、予算が膨らむので、財務省はそれを避けたともいえる。

   地銀再編では、人的支援も必要になり、行政職員の再就職ともいえる。その意味で、行政にとってやる気が出てくる仕事だ。菅政権は、こうした役人心理を上手く使って、難題に取り組むのだろう。

   地銀再編は、地銀が効率的な都銀と人的関係で優位な信金に挟まれた構造問題もあり、容易に解決しないが、それでも結果を求められている。特に、日銀は大きな責任を菅政権に負ったのは間違いない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「国家の怠慢」(新潮新書、共著)など。


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