2020年11月8日に開催された体操の国際競技会で、新型コロナウイルスの感染対策として取られたという「除菌のミストシャワー」に対し、安全性の懸念が指摘されている。厚生労働省では、人がいる環境で消毒・除菌剤を空間噴霧することを推奨していない。
大会を主催した公益財団法人日本体操協会は取材に対し、「常に噴霧されるものではないため、設置に至りました」と答える。一方、噴霧に使用した成分については「早急に確認の上、関係機関にも報告させていただきます」としている。
「サーモメーター、消毒液や除菌のミストシャワーを設置するなどの感染防止対策」
体操の「Friendship and Solidarity Competition(友情と絆の大会)」は8日、東京・国立代々木競技場で、約2000人の観客を入れて開催。日本、ロシア、中国、米国の選手がしのぎを削った。新型コロナウイルス感染拡大後、東京五輪の実施競技として国内初の国際大会となり、五輪の試金石としても注目された。
同日夜、現地を訪れていた小池百合子東京都知事がツイッターで、同大会では「入場口にサーモメーター、消毒液や除菌のミストシャワーを設置するなどの感染防止対策が行われました」と投稿。除菌のミストシャワーという方法をめぐって波紋が広がった。
厚生労働省はウェブサイトで、新型コロナの消毒・除菌方法としての「空間噴霧」について、「人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません」と明記している。
世界保健機関(WHO)が「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」「屋外であっても、人の健康に有害となり得る」、米国疾病予防管理センター(CDC)が「消毒剤の(空間)噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」などの見解をそれぞれ示していると引きながら、同省は次の認識を示している。
「これらの国際的な知見に基づき、厚生労働省では、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしていません。薬機法上の『消毒剤』としての承認が無く、『除菌』のみをうたっているものであっても、実際にウイルスの無毒化などができる場合は、ここに含まれます」