住設機器製造大手、TOTOの株価が上昇気流に乗っている。好決算を受けて2020年11月4日には一時前営業日比5.1%(255円)高の5230円をつけた。
2月7日の年初来高値(5040円)をはるか飛びこえて約2年3カ月ぶりの高値となる躍進だ。米大統領選でバイデン氏の勝利が濃厚となって相場環境が改善したことも後押しし、その後も上値を追う展開が続いている。
米国や中国で売り上げ伸ばすウォシュレット
年初来高値を更新する材料となったのは、TOTOが10月30日に発表した2020年9月中間連結決算と、これまで「未定」としていた2021年3月期通期の業績予想だ。特に、コロナ禍による衛生意識の高まりから、温水洗浄便座「ウォシュレット」が米国や中国で売れていることが好感された。
ではまず中間決算の内容を確認しよう。売上高は前年同期比13.1%減の2575億円、営業利益は39.3%減の106億円、純利益は63.2%減の45億円だった。コロナ禍とはいえ、減収減益ではある。ただ、これまで公表していた中間決算の業績予想を、売上高は75億円、営業利益は46億円それぞれ上回った。理由は国内事業の落ち込みが想定より小さかったためとしている。
全体としては「会社計画よりは改善した減収減益」なのだが、市場が反応したのは海外事業の改善だ。野村証券は11月2日に配信したリポートでTOTOの目標株価を2880円から3700円に引き上げたが、その理由として「米国、中国とも7~9月の売上高が(前年同期比)25%超の伸び」であることを挙げている。
中心となる商材はウォシュレットだ。TOTOの決算関連資料によれば、北米で1~6月にウォシュレットの販売台数は前年同期比53%増となり、7~9月は2.6倍に急伸した。野村は「米国におけるウォシュレットの売上高は2020年3月期で80億円強に過ぎないが、今後の成長を牽引する商品として期待される」と指摘、市場でもそうした見方が強まった。中国でのウォシュレットの販売台数は1~6月に前年同期比9%減少したものの、7~9月には33%増に反転し、こちらも市場の期待を誘った。
海外市場開拓の期待感
2021年3月期の業績予想は、売上高が前期比5.6%減の5630億円、営業利益が15.7%減の310億円、純利益が25.8%減の175億円。中間決算より減収減益の幅がいずれも小さくなっており、「V字回復」を予感させる内容だ。
1980年6月に発売され、1982年のテレビCMで「おしりだって、洗ってほしい。」のキャッチコピーが話題となったウォシュレットは清潔好きの日本人に着実に浸透。ウォシュレットを含む温水洗浄便座の国内一般世帯の普及率は8割に達したとされる。ウォシュレットの累計出荷台数は5000万台超に及ぶがほとんど国内向けであり、海外に未開拓の大地が広がる。一度使い始めるとやめられない人が多い商材でもある。
「ウィズコロナ」の時代に海外で高まるウォシュレット需要により、投資家の関心を引きつけるTOTO株。高値警戒感から利益確定売りにもまれる局面も予想されるが、今後有望な日本株の一つであるとは言えそうだ。