菅義偉首相が日本学術会議が推薦した法律・歴史学者6人を任命しなかった問題では、菅氏が任命拒否の理由を説明しない上、野党の質問に窮する場面もあることから、国会審議が紛糾する場面もしばしばだ。
だが、最近の世論調査では、説明不足を問題視する声は多いが、任命拒否そのものについては「問題だとは思わない」を「問題だ」が上回るものもある。この問題に関するSNS上の書き込みも減少が続いている。問題が解決されないまま、世論の関心がフェードアウトしつつあることが浮き彫りになった形だ。
元会長も野党ヒアリングで「整合性」疑問視するが...
任命拒否がなぜ起こったのか、その疑問はくすぶったままだ。11~17年にかけて日本学術会議の会長を務めた大西隆氏は2020年11月9日に国会内で行われた野党合同ヒアリングに出席し、菅氏が学術会議について持ち続けてきたという「問題意識」と、かつて菅氏と面会した際の発言内容との整合性を疑問視した。
「一貫して問題意識を持ってこられたというのであれば、どうして今までのところで任命拒否等をされなかったのか。私は菅官房長官にも何回かお目にかかったが、その時に懸念が表明されたことはなかった。そういう時に懸念を表明していただければ、学術会議としてそれを受け止める、選考方針として、みんなで議論して、それを織り込んでいく、ということも考えられたかもしれないと思うが、それはなかった。ずっと問題意識を持ってこられたと言われても、にわかに『そうですか』とは言いにくいところがある」
最近の世論調査でも、政府の説明に納得していないという声の方が多く、内閣支持率は引き続き下落傾向だ。JNNが11月7~8日に行った世論調査では、
「(任命)見送りに関する菅総理の説明について十分だと思いますか? 不十分だと思いますか?」
という質問に対して、「十分だ」21%、「不十分だ」56%、「答えない・わからない」が23%だった。菅内閣の支持率は前回調査(10月3~4日)よりも3.9ポイント低い66.8%で、不支持率は4.0ポイント高い28.2%だった。
支持率下落が7ポイントにとどまり「この問題への批判は広がりを欠く面もあるようだ」
とはいえ単純な比較はできないものの、「説明の十分さ」ではなく、「任命拒否問題」そのものに関する質問への回答では、様相が変わってくる。毎日新聞と社会調査研究センターが11月7日に行った世論調査では、任命拒否の問題について「問題だ」と答えた人は37%で、「問題だとは思わない」は44%、「どちらとも言えない」は18%。「問題だとは思わない」が「問題だ」を上回った。「問題だ」と答えた人の8割近くが菅内閣を「支持しない」と回答したといい、記事では「任命拒否問題が支持率低下の一因となったようだ」と分析している。
内閣支持率は政権発足直後の前回調査(9月17日)から7ポイント低い57%だった。不支持率は9ポイント高い36%だった。記事では、支持率の下落幅が7ポイントにとどまったことから、「この問題への批判は広がりを欠く面もあるようだ」とも指摘している。
SNSでの言及数はピークの約15%に
SNSでも、この問題に対する反応は減少傾向だ。この問題は、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が10月1日に報じて明るみに出た。SNS分析ツール「ソーシャルインサイト」で調べたところ、翌10月2日に「学術会議」に関するツイッターの書き込み急増。翌10月3日にはさらに増えたが、この日がピークで、その後はゆるやかな減少が続いている。
突発的にツイートの数が増えるタイミングもある。例えば、「民営化論」が話題になった10月6日、前日の会見で静岡県の川勝平太知事が「菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露見した」などと述べた10月9日、日本学術会議の事務局体制の縮小が報じられた翌日の10月24日、菅氏がNHKの番組で「説明できることとできないことがある」と述べたことが波紋を広げた10月27日などだ。
ただ、これらのツイートの伸びは一時的で、11月9日のツイート件数は、ピークの10月3日の件数を100とすると、14.7にとどまっている。「日本学術会議」のキーワードの分析でも、同様の傾向が出ている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)