ゼネコン大手、鹿島の株価の下落基調が続いている。10月22日には一時、前日終値比3.2%(37円)安の1148円と、約5カ月ぶりの安値をつけた。
その後やや盛り返す局面もあったが、30日まで4日連続下落し、30日の終値は1112円と21日比で5.2%(61円)安。週明けはやや戻しているものの、証券会社の投資判断格下げを受け、「コロナ禍で民間投資が縮小する」との懸念が改めて意識されている。
先行き不透明感が晴れない
10月22日の市場の材料はみずほ証券の21日付リポート。投資判断を3段階で最上位の「買い」から真ん中の「中立」に格下げし、目標株価も1580円から1230円に引き下げた。コロナ禍でホテルや商業施設の新増設を控える動きが見られるなか、建設投資の先行き不透明感が晴れないことが格下げの背景にある。
鹿島の株価は「コロナ第1波」のショックで大幅に下げた春先(909円・3月17日)を底に夏に向けて緩やかな回復軌道を描いてきた。しかし9月以降は下落傾向が続き、8月31日終値(1313円)と10月30日終値を比べると、2カ月間で15.3%安となった。この間、SMBC日興証券が9月10日付リポートで投資判断を3段階で最上位の「1」から真ん中の「2」に格下げし、目標株価を1700円から1550円に引き下げるなど、市場の目は厳しくなっている。
SMBC日興証券は格下げについて、業界他社との比較でやや買われすぎた、というテクニカルな要因を挙げた。ただ、2020年4~6月期連結決算で営業利益が前年同期比倍増したことは不採算工事の損失縮小などの一過性の要因によるもので、7月以降の業績改善は「鈍化する可能性がある」とし、それが株価が伸び悩む一因になるとも指摘した。
民間需要がどこまで戻ってくるのか
ゼネコンは外食や小売りのような「日銭商売」ではなく、一定の時間をかけて取引先から受注し、売り上げを立てていくビジネスのため、コロナ禍の影響は今後じわじわ響くことになる。
鹿島に大成建設、大林組、清水建設を加えた大手4社の2021年3月期の連結純利益(各社が公表した業績予想)の合計は前期比33.5%減の2910億円で、2016年3月期以来、5年ぶりの低水準に落ち込むと見込まれている。もちろん、ほぼコロナ禍以前から予定されていたものの積み上げであり、もともと五輪関連などの需要の膨らみから一転して一服感がある年度にあたっていた。今後、官公需は予定通り進むにせよ、民間需要をどう見通すかが重要になる。
この点、一つの見方が出た。大和証券は10月22日付リポートで鹿島の投資判断を「2」から「1」へ5段階の最上位に格上げし、目標株価も1600円から1700円に引き上げた。「国内建築市場の竣工ラッシュは2019年度で一旦ピークアウトも2022年度以降は再び活発化する方向へ」というのがその理由。先述のみずほ証券リポートの翌日の配信で、23日の鹿島の株価は一時前日終値比2.0%(23円)と好意的に反応した。
しかし最初に書いた通り、その後は10月30日まで4日連続下落を招いており、大和リポートの「効果」は長続きしなかった。投資家の間で「今後の建築需要は不透明だ」との認識が根強いことを示していると言えそうだ。