新型コロナウイルスの影響による休園を経て2020年7月1日に営業を再開した東京ディズニーランド(TDL)について、ちょっとした変化が話題になっている。10月1日から園内の一部のレストランで、ビールなどのアルコール類のテスト販売が始まったのだ。
TDLより対象年齢が高い東京ディズニーシー(TDS)では従来から販売していたが、TDLでは一般入園者には提供されていなかった。1996年の上場以来初の通期赤字となる運営会社のオリエンタルランドにとって、TDLのアルコール解禁は収益を少しでも改善させるための苦肉の策だ。
休園、そして再開後も入園者制限
厳密にはTDL内にある会員制レストラン「クラブ33」では以前からアルコール類が提供されていたが、ここはTDLの公式スポンサーが取引先を接待する際に利用するような特別な場所だ。公式ホームページの「レストラン一覧」にも記載されておらず、一般入園者は足を踏み入れることができない。アルコール類の販売解禁を受けて、ユーチューブには「れすとらん北斎」や「イーストサイド・カフェ」で入園者がビールやワインを楽しむ動画がアップされている。
オリエンタルランドは、人気アトラクションに優先的に入場できる「ファストパス」の有料化も検討している。このように入園者1人当たりの売り上げ(客単価)の引き上げに必死なのは、新型コロナで約4カ月間休園した後も、感染拡大予防のために入園者数を通常の半分以下に制限して営業しているからだ。このため、2020年3月期に2901万人だった入園者数(TDLとTDSの合計)は、21年3月期には3分の1以下の950万人まで落ち込むと見込み、オリエンタルランドは連結売上高が前期比60.1%減の1854億円になると予想する。
売り上げが減るならコストを抑えるしかない。園内のイベントやショーを中止しているほか、集客のためのプロモーション活動も減らして経費を削減する。また、園内でアトラクションを運営したり、物販に従事したりする「キャスト」と呼ばれる準社員の新規採用を停止。ダンサーらショーの出演者には、別業務への異動といった事実上の「退職勧告」をした。役員報酬の減額に加え、社員も冬のボーナスを減額する。こうして人件費を抑制するものの、2021年3月期の連結最終損益は511億円の赤字(前期は622億円の黒字)に落ち込むと見込んでいる。