コロナ禍の影響で2021年3月期の連結純損益が5100億円の赤字になる見通しになったANAホールディングス(HD)は、航空事業以外の多角化を進めることで生き残りを図りたい考えだ。
20年10月27日の記者会見で打ち出された方針のひとつが、「新しいプラットフォームビジネスの具現化」で、ANA HDの片野坂真哉社長によると、キーワードは「スーパーアプリ」。現状ではマイレージ関連とカード関連の売上高は合計で2千数百億円規模だが、「これから5年ぐらいかけて倍にしていけるとみている」(片野坂氏)としている。
中期経営戦略の「顧客資産事業」は「形にできなかったんですよね」」
ANA HDはこれまで、プラットフォーム事業の前提になるデジタルマーケティングを推進してきた。18年2月に策定した「2018-22年度 中期経営戦略」では、「新たな事業ドメインの創造」をうたう中で、
「2016年度に設立した顧客資産会社『ANA X(エーエヌエーエックス)』を中心に、ANAグループが有するデータ等を分析・活用することで新たな価値を創出し、『ANA経済圏』を拡大します」
と説明。この「顧客資産事業」では、既存の「旅行事業」と連携しながら、(1)顧客データの一元管理(2)ビッグデータの活用進化、を提唱していた。
だが、片野坂氏によると、この「顧客資産」の取り組みは「形にできなかったんですよね」。「コロナによる危機感」からの再始動だ。航空事業に依存する「一本足打法」から脱却するためのプラットフォーム事業で、片野坂氏は
「世の中的には、もっと先駆者で、日本でも巨大なプラットフォームがあると思うので、そういったモデルを研究してやっていきたい。キーワードは『スーパーアプリ』。ANAのホームメージには、1日に1.4億人のアプローチがあるし、そういったANAが持つ顧客資産を活用して、成功させていきたい」
などと話した。