リーグ優勝こそならなかったが、パ・リーグを最も盛り上げたともいえるのがロッテだ。飛び抜けた選手はいないが、文字通り「全員野球」でソフトバンクを苦しめた。その中で、9月上旬に巨人からトレードで電撃加入した沢村拓一の貢献度は大きい。
セットアッパーとして、18試合登板で11ホールド、防御率2.04と勝利の方程式に不可欠な存在になっている。
メジャーの複数球団が動く?
ロッテファンのハートをがっちりつかんだが、オフの去就は不透明だ。10月17日に海外FA権の取得条件を満たした。沢村は中大から10年ドラフト1位で巨人に入団したが、当時からメジャーの注目度は高かった。
「当時の大学生投手は大石達也(元西武)、斎藤佑樹(日本ハム)、福井優也(楽天)の『早大トリオ』がドラフトの目玉として評価が高かったですが、メジャーの球団から断トツで人気だったのが沢村。特にヤンキースは熱心で獲得に乗り出すほどでした。近年は巨人で思うような活躍ができなかったですが、ロッテに移籍して輝きを取り戻しています。150キロを超える直球と落差の大きいスプリットのコンビネーションは魅力です。メジャーは縦の変化で勝負できる投手を探しているので、沢村は評価が高い。FAすればメジャーの複数球団が獲得に動くとみられます」(スポーツ紙メジャー担当)
メジャーだけではない。FA宣言すれば、国内他球団も獲得に動く可能性がある。沢村の今季の年俸は1億5400万円。ロッテで活躍しているが、稼働したのは2カ月弱なので減俸の可能性が高い。今年は救援陣の崩壊が要因で白星を重ねられなかったチームが多い。三振奪取率の高い沢村は貴重な存在だけに、資金力のある球団は好条件を提示して獲得に名乗りを挙げることが予想される。
「好条件のチームだから行くというタイプではない」
スポーツ紙の遊軍記者はロッテ残留を予測する。
「巨人で3軍まで落ちて悩んでいた沢村はトレードで獲得してくれたロッテに強い恩を感じています。チームにもすっかり溶け込みました。10月29日のソフトバンク戦でバッテリーエラーで2者が生還する逆転サヨナラ負けを喫した際は、その場にうずくまって涙を流していた捕手の田村龍弘に真っ先に駆け寄って背中をさすっていました。お金も大事ですが、好条件のチームだから行くというタイプではない。ロッテで優勝したい思いは強いと思います」
ロッテファンからは「沢村残ってくれ」、「メジャーなら仕方ないけど国内の他球団はいかないでほしい」など様々な声が聞こえる。沢村の決断が注目される。