岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
4年前とは違う厳重警戒下の投開票

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「4年前の二の舞いは絶対に踏みたくない。ヒラリーが勝つと疑いもしなかったから、あの時は投票しなかった。でも今回はちゃんとしてきたわ。ニューヨーク州は民主党支持者が多いけれど、絶対に油断できない」

   大統領選の投票日(2020年11月3日)、ニューヨーク市マンハッタンでそう言うサーシャ(28)の胸には、「I VOTED!(私、投票しました)」のシールが貼られていた。

   この日、ニューヨークの街角では、このシールを胸に付けている人が目立った。そして夜に入り、一部で開票が始まった。

  • フィラデルフィア市庁舎前で「結果を守れ」と書かれたサインを掲げる人たち(2020年11月、筆者撮影)
    フィラデルフィア市庁舎前で「結果を守れ」と書かれたサインを掲げる人たち(2020年11月、筆者撮影)
  • フィラデルフィア市庁舎前で「結果を守れ」と書かれたサインを掲げる人たち(2020年11月、筆者撮影)

街じゅうに立てられた「VOTE!」のサイン

   4年前、大逆転された民主党支持者には、世論調査とマスコミを信じ切って油断した苦い思い、隠れトランプの存在を思い知ったトラウマがある。そのため、今回は投票日当日まで、「投票して」と必死の呼びかけのメールが私の元にも送られてきた。

   期日前投票でも、全米各地の投票所で長蛇の列ができた。並んでいる人たちにランチを配るなど、なんとか投票所に足を運んでほしいと頑張ってきた。

   マンハッタンの五番街にあるニューヨーク公共図書館には、「BLACK LIVES MATTER」の大きな垂れ幕がかかっている。図書館前の両脇に設置された有名なライオン像は、マスクした顔の前に本に見せかけてサインが立てられ、そこに「VOTE!」と書かれている。

   こうしたサインを、レストランの店先の立て看板、バスのチケット売り場の窓ガラスなど、街のあちこちで目にした。

   投票日前日、ニューヨークからペンシルベニア州フィラデルフィアに行くバスの中で、隣に座っていた青年フィリップと話した。ニューヨークに住む彼は、民主党の選挙活動を手伝うために、両親のいるフィラデルフィアに向かうところだった。

   いつもは父親の役目だったが、新型コロナウイルス感染を恐れ、代わりにやってほしいと頼まれた。

   今回はコロナ感染を懸念し、実際に投票所に出向きたくない人たちのために、郵便投票が全米で採用された。

   フィリップは言う。

「でも、その仕組みをよく理解していない人がすごく多いんだ。例えば、両親の住むところでは、郵便投票用紙を取り寄せたけれど、郵送せずに自分で投票所に行こうとあとで気が変わっても、郵便投票用の投票用紙を持ってこなければ、その場で投票できないんだ。取りに行くのは面倒だから、あるいは時間がないからって、投票を諦めてしまう人も出てくる。

 今日はこうしたことを、事前に電話やメールで知らせないと。4年前の教訓があるから、1票でも無駄にはできない。コロナが心配だから、投票所に行かずに郵便投票したいという人は、コロナを恐れない共和党支持者より、民主党支持者に多いと思うんだ」

   郵便投票の7割は、バイデン支持とも言われている。

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