「勝利宣言」まで何が起きるかわからない
「トランプが勝つ」と答える民主党支持者は、やはり4年前に世論調査とマスコミの予想に「裏切られたトラウマ」があるのだろう。「隠れトランプ」の存在も大きかった。それだけに、答えるときにも、より慎重になるのかもしれない。
その中には、「民主的なやり方では自分たちが勝っても結局、共和党が不正を行ったり、いちゃもんを付けたりして、負けを認めない」と危機感を抱く人たちが多い。
一方で共和党も、「新型コロナウイルス感染拡大を恐れて民主党が提案した郵便投票で、不正が行なわれる」と懸念している。
勝利が宣言されるまで、何が起きるかわからない。両陣営とも、戦い続けるためには、資金が必要だ。
民主党、共和党の両陣営から、選挙日直前まで毎日複数のメッセージやメールが、「Mitsy(私のニックネーム)」と呼びかける形で盛んに送られてきた。
民主党からは、メールや電話での支持者への呼びかけ、共和党側からは選挙戦直前まで全米で行われた支持者集会への参加呼びかけもあったが、やはり寄付を求めるものが多い。
民主党側から「バラク・オバマ氏」の名で、こんなメールが届いた。
「異常な選挙です。今から勝者が宣言される瞬間まで、何が起きようとそれに備えるための資金が必要なのです。ミッツィ、選挙前にあなたに私が送る、これが最後のメールです。このキャンペーンで成し遂げようとしていることは、この先、何世代にも影響を及ぼします。私と同じように、ミッツィ、あなたもそれを誇りに思っていると願っています」
共和党は「最後の寄付のお願い」で、「民主党は汚いやり方でこの選挙に勝とうとしています。選挙後も結果を守り、戦い続ける資金を確保するために、あなたの寄付をお願いしなければなりません」「バイデンとカマラにこの国を崩壊させるわけにはいかない」「あなたの国のために戦いましょう!」と訴える。
マイク・ペンス副大統領の名でも、「危機的な状態なので、私がメッセージを送っています。勝つためには、選挙資金を大幅に増やさなければなりません」
いよいよ選挙本番。明日からこの国で何が起きるのか。神のみぞ知る。こんなに不安な思いで大統領選当日を迎えたことは、これまで記憶にない。
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。