新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、2021年の正月は例年とはひと味違ったおせちが食卓をにぎわせそうだ。感染を恐れ、正月休みも外出を見合わせて「巣ごもり」を続ける家庭は多い見通しで、「おせちぐらいは豪華に」との声も多い。感染予防はもちろん、「ぜいたく」が大きなテーマになるとみられる。
老舗百貨店の松屋がインターネット上で実施したアンケート調査(1440人)によれば、2021年の正月を「自宅で過ごす」と答えた人は73.6%と7割を越えた。
海外旅行や帰省を控えざるを得ない分を...
また、「おせちを購入する」と答えた人は69.3%に上り、その購入予算については「増やす」と答えた人が17.7%だった。海外旅行や帰省を控えざるを得ない中、その分の費用をおせちに充て、「自宅で豪華に」の傾向が広まる可能性が高い。
百貨店の今回のおせちは感染予防が欠かせないポイントになっている。各社とも複数人でシェアしたり、取り分けたりしないで食べられるよう工夫し、一人用や少人数用など小さなサイズをそろえている。
高島屋は1人前のおせちを2個セットにした商品(税込み1万800円)を売り出し、松屋は「一人一段おせち」(1万2960円)を販売中だ。そごう・西武は、プラスチックカップで1品ずつ分けたおせち(2万9160円)を取り扱っている。阪急百貨店も一人用のおせちシリーズ「銘銘おせち」(2個セットの場合で1万800円~2万1600円)を用意している。いずれも順調な予約状況だという。
また、ぜいたくを求める声を重視し、豪華版のおせちも続々と登場している。高島屋は有名シェフ4人がコラボしたスペシャルおせち「夢の饗宴おせち」(10万8000円)を準備。イオンショップでは、金沢の郷土料理「治部煮」などを盛り込んだ「金沢迎賓館与段重」(5万4000円)などをそろえ、旅行気分も味わえる、とPRする。
大手百貨店幹部も期待こめる
他方、今年は感染予防からリモートワークなどが一気に広がったが、おせちの予約に際してもネット通販を活用する人が急速に増えているという。Amazonが「おせち料理特集2021」を掲載するなど、通販各社は特集を組んだり、特設サイトを設けたりして、売り込みに相当な力を入れている。
コロナ禍による厳しい経済環境の中、節約志向も徐々に高まっている。好調なおせち販売は小売り各社にとって数少ない明るい材料だ。既に多くの百貨店は前年比1割程度の売上増を予想。ある大手百貨店幹部は「予約状況は例年にないほど盛況で、かなり期待できる」と話している。