新型コロナウイルス感染拡大により失われた旅行需要の喚起をめざす国の「Go To トラベル」キャンペーンについて、観光庁は2020年10月29日、支援対象を「観光目的」の旅行商品に限定するとの基準を明確化した。特に「ビジネス出張」を除外する方針を打ち出しているが、観光目的かビジネス目的かをどう判断するのかと疑問の声もあがっている。
観光庁の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「法人の出張手配を目的とした予約サイト」や「法人向けクレジットカード」を使ったものなどを対象外にするとしている。ただ、それ以外の方法で予約した旅行商品がビジネスに使われることもあるが、どのようにしてビジネス目的の商品を対象外にしていくのか。
ビジネス出張を目的とした旅行商品は「利用を制限するための措置を講じる」
国内旅行代金の35%割引、旅行先で使える同15%相当の地域共通クーポンの二本柱からなるGo To トラベル。7月下旬の開始から3か月あまりが経ち、観光庁はGo To トラベル公式サイト上で「一部の参加事業者において、観光を主な目的としているとは言えない旅行商品等の販売が確認されております」として支援対象を明確化することを発表した。
「サービス産業消費喚起事業(Go To トラベル事業)旅行会社・OTA 等旅行事業者・宿泊事業者向け取扱要領」には、対象外となる旅行商品として「事務局が対象商品として適切でないと認めるもの」という規定がある。これにもとづいて適切かどうかを個別具体的に判断してきたというが、その基準・考え方の詳細を記している。下記4点などから「社会通念上の観点も含めて総合的に判断します」という。
(1)観光を主たる目的としていること
(2)感染拡大防止の観点から問題がないこと
(3)旅行商品に含まれる商品やサービスの価額が通常の宿泊料金の水準を超えないこと
(4)旅行者自身が旅行期間中に購入又は利用するものであること
そして「ビジネス目的」の商品を対象外にするというこんな記載がある。
「ビジネス出張を目的とする旅行商品については、本事業の目的である観光需要の喚起という観点から、本事業の利用を極力制限させていただくべく、法人の出張手配を目的とした予約サイトにおける割引の適用除外など、利用を制限するための措置を講じることとします」
ただ、発表直後からインターネット上では、「観光目的」と「ビジネス目的」の区別の仕方をめぐって疑問の声も聞かれる。
「どれをどうもって出張と観光を判断するつもりなんだろう」
「ビジネス目的かそうでないかはどう判断するんだろ? スーツで入館したらビジネス目的になるのかな笑」
「まぁ出張か観光かなんて見分けつかないしポーズだけなんですかね...出張といいつつ観光みたいなケースもあるわけで」
発表では「各旅行商品については、上述の基準・考え方に照らして個別具体的に支援の対象外とするか否かを判断いたしますので、支援の対象になるか判断に迷われる場合には、事務局に事前にご相談していただくようお願いします」と、最終的には「個別具体的」な判断になるとしている。
「ご協力を呼びかける形になります」
観光庁観光産業課の担当者は10月30日、J-CASTニュースの取材に「Go To トラベルを実際に動かしてきたところ、本来の制度趣旨である『観光需要の喚起』とはかけ離れた使い方も出てきました。7月の開始当初は人の移動がほとんどなかったのが、9月ごろから動くようになってきたので、本来の目的に注力できるようにしようと軌道修正をしました」と話す。
ビジネス目的の出張が観光目的の旅行と違うのは「会社で費用を出している」点にあるとする。一方で「ビジネスか観光か、切り分けにくいところは確かにある」とも話す。まず区分できるものとして、先の発表にあった「法人の出張手配を目的とした予約サイト」のほか、「法人向けクレジットカード」を使ったものなどを対象外にし、Go To トラベルの給付は個人が支出する観光需要にあてるという。
ただ、一般的な宿泊予約サイトでホテルを予約し出張に利用するような場合、外見上「ビジネス目的」とは判断しづらい。一方で、観光目的でも宿泊費を抑えようとビジネスホテルを利用するケースもあるため、単に「ビジネスホテルはGo To トラベルの対象外」とすることも難しい。担当者はこう話す。
「それはその通りで、ビジネスホテルを対象外にするわけではありません。宿泊施設の食事でなく、街中のお店で食事したいという方などが、ビジネスホテルに泊まって観光するスタイルはよくあります。
法人用サイトや法人向けクレジットカード以外で、ビジネス目的を対象外にするにあたっては『企業からお金が出る出張目的の宿泊は、Go To トラベルの利用を控えていただきますようお願いします』とご協力を呼びかける形になります。
厳密に区分することは不可能ではないかもしれませんが、厳密なルールをつくると今度は宿泊施設や旅行会社に負荷がかかり、現場で混乱することも増えるでしょう。現場が動かなくなったら本末転倒ですので、そのバランスをとれるところで工夫していきます」
Go To トラベル事務局のサイトでは今回、通常の宿泊料金を著しく超えるサービス・商品を提供する旅行商品、ヨガライセンス講習、英会話講習付き宿泊プラン、ダイビング免許付き宿泊プランなども対象外商品になると列挙。同じ10月29日には「接待等を伴うコンパニオンサービスを含む商品」も対象外にした。これらは11月6日の予約販売分から適用される。また10月30日には、1回で8泊以上の宿泊を伴う旅行の場合、7泊までを支援対象とする制限の導入も発表。こちらは11月17日以降の予約販売分から適用される。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)