プロ野球の巨人がリーグ優勝を決めた。今年は新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に遅れる異例のシーズンとなったが、シーズン序盤から原辰徳監督(62)指揮のもと安定した力を見せリーグ連覇を達成した。2位以下を突き放して連覇を成し遂げた原巨人。J-CASTニュース編集部は、巨人の戦略コーチを務めた橋上秀樹氏(54)に今シーズンの巨人の強さを分析してもらった。
「チーム全体の数字に派手さはないが僅差に強い」
今シーズンは開幕から4連勝を飾り、開幕直後の6月を7勝2敗1分で走り抜けスタートダッシュに成功。7月中旬には7連勝をマークするなどチームは一気に上昇気流に乗った。
「今年の巨人をみると、1点をしっかり取り、1点をしっかり守る野球本来の形が徹底されていた。チーム全体の数字に派手さはないが僅差に強い。僅差で勝っているということは投手力であったり守備力、機動力。どちらかといえばディフェンス面ですね。これが今年の巨人の強み。これが明らかに他球団と違った。ベンチワークも冴えていたし、それに応える選手の力量もありました」(橋上氏)
橋上氏は巨人が他球団を圧倒した要因のひとつに若手の積極起用をあげ、原監督と阿部慎之助2軍監督(41)のスムーズな連携によって若手が活躍しやすい環境を提供することが出来たと指摘した。
「ゲームをやりながら成長していった」
「去年に引き続き原監督が若い選手を積極的に起用して、ゲームをやりながら成長していった。1軍と2軍の連携がしっかりしているのでシーズン中に2軍から呼んだ選手が結果を残せやすい環境にあったと感じました。若い選手が自信を持ちながら成長し、その加速度が後半に増していった感じです。若い選手たちは実績がない分、今シーズンに関しては未知数でしたが、若い選手がいい方向に向いたのがこのような成績になったと思います」(橋上氏)
また、橋上氏は指揮官の力量にも言及。セ・リーグの監督において原監督の指導力は他の5球団の監督を大きく上回るという。橋上氏は「威厳」という言葉を用いて今シーズンの原監督の指導力を表現した。
「最近では近寄りやすい監督が主流になっているが、原監督は威厳を保ちながら選手に適度なストレスを与えている。緊張感を保ち、集中力を保ってよいパフォーマンスを引き出す。そういう環境を作っている。今はどちらかといえば、選手にストレスを与えないようにしようとする監督が多いが、原監督は選手に適度なストレスを与えている。選手に適度なストレスを与えることは、選手を成長させるのには絶対に必要なこと。いい緊張感がいい集中力を生むので凡ミスが起きない」(橋上氏)
「組織はトップの力量以上には成長しない」
橋上氏は現役時代に故野村克也氏の指導を受け、楽天では野村氏の右腕としてヘッドコーチを務めた。橋上氏はヤクルトでプレーした現役時代、野村氏の「威厳」を肌で感じ、自身の成長につながったという。
「私の現役時代は野村監督に話しかけることが出来なかった。練習中も常に監督の目を気にしていました。全力疾走を怠ったらすぐに外されるので手を抜けない。適度なストレスを与えられているので、集中力を切らすことはなかった。それが勝負所でのプレーに反映される。普段からそのような環境下でやっているので、ある程度の緊張状態が当たり前になってくるのです」(橋上氏)
また、橋上氏は今シーズンの巨人の戦いぶりをみて、野村氏の言葉を思い出したという。
「組織として勝つためには、組織のトップの力量が必要となる。野村監督は『組織はトップの力量以上には成長しない』とよくおっしゃっていました。今シーズンは野村監督の言葉を痛感しました。優勝するには選手の力量はあるが、一番の違いは監督の違いだと改めて思ったシーズンでもありました」(橋上氏)