プロ野球の各球団が来シーズンへ向けてのチーム編成に着手している。2020年10月26日にドラフト会議を終え、次なる戦力補強となるのはフリーエージェント(FA)。新型コロナウイルスの影響で海外からの補強が例年になく厳しい状況にあるなか、今オフのFA戦線はいかなる展開をみせるのか。
梶谷は守備範囲とパンチ力が大きな魅力
今オフのFA戦線の目玉となるのは、ヤクルト・山田哲人内野手(28)と中日・大野雄大投手(32)の2選手だろう。2選手ともに実績は十分で、FA権を行使すればセ・パ両リーグを巻き込んでの争奪戦になることは必至だ。とくに山田は28歳という年齢も大きな魅力で、長期的な活躍が見込まれる。
両者の今シーズンのここまでの成績をみると、山田が本来の力を出し切れずにいる。10月29日時点で87試合に出場し打率.258。本塁打は12本、打点は「51」にとどまっている。一方の大野は19試合に登板して10勝6敗。防御率は実に1.91で、巨人の菅野智之投手(31)と沢村賞争いを繰り広げている。
山田、大野に話題が集中しがちのFA戦線だが、ここにきて存在感を見せているのがDeNA梶谷隆幸外野手(32)だ。9月に入ってから急激に打率を上げ、10月29日時点でセ・リーグの打率部門で打率.331でトップに立っている。ケガの多さが不安材料となるものの、広い守備範囲とパンチ力は大きな魅力だ。山田、大野に比べ年俸(7400万円=金額は推定)は抑えられており、こちらも争奪戦が予想される。
ヤクルトは流出を阻止したいところだが...
山田を含めて3選手のFA移籍の可能性があるのがヤクルトだ。先発陣の柱である小川泰弘投手(30)とブルペンを支える石山泰稚投手(32)がFA権の取得条件を満たしている。チームは今シーズン最下位に沈んでおり、来シーズンに向けてチームの再建が急務となる。3選手いずれもチームの中心的選手だけに、球団としては慰留に全力を注ぎ流出を阻止したいところだ。
広島のリーグ3連覇に貢献した田中広輔内野手(31)の動向にも注目が集まる。昨年は打撃不振に陥り8月に右膝の手術を受け、打率.193でシーズンを終えた。今シーズンは開幕戦からショートでスタメンに名を連ね、103試合に出場(10月29日時点)し、打率.255、7本塁打、35打点をマークしている。プロ野球歴代6位となる連続フルイニング出場を誇るタフさは健在だ。
パ・リーグでは西武の増田達至投手(32)が注目の的となる。今シーズンは45試合に登板(10月29日時点)し5勝1ホールド31セーブ、防御率2.20をマーク。昨シーズンは防護率1.81で30セーブと抜群の安定感を見せ、今シーズンも首脳陣の期待に応えている。FA権を行使すれば山田、大野に並んでセ・パ両リーグによる争奪戦は必至で、FA戦線の「主役」のひとりとなるだろう。