日用品大手、ユニ・チャームの株価が連日、上場来高値を更新する局面があり、その後も好調を維持している。マスク需要の持続などコロナ禍が事業拡大、業績改善につながっていることに加え、使用済みおむつ再生の取り組みも投資家の評価を高めているようだ。
2020年10月19日に前週末終値比1.4%(72円)高の5078円まで上昇し、上場来高値を更新した材料の一つは16日付の大和証券のリポート。個別銘柄のユニ・チャームではなく、化粧品・トイレタリー商品の国内スーパーにおける販売動向を分析したもので、「コロナ流行による特需とみられるハンドソープやウェットティッシュ、マスクの販売金額は従来同様に大きく伸張している」と指摘した。
ESG投資拡大の流れに沿う
9月最終週と10月第1週で、この3商材を除いた衣料用洗剤などの前年同期比は、2019年10月1日の消費税率引き上げの影響が明らかな一方、「前の週との比較」では概ね同水準で推移しているといい、日用品における3商材の需要の強さがうかがえる。リポートでは「10月1日からGoToトラベルキャンペーンの対象に東京発着が加わり、獲得したクーポン券で生活日用品を購入するような動きも出てくる可能性がある」とも指摘した。
ユニ・チャームは「超快適」「超立体」などと呼ぶ高価格帯の家庭用不織布マスクを国内で生産している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、24時間体制でフル稼働を続けており、10月以降に設備を増強し、さらに生産量の上積みを図る。国内の需給度合いを見ながら2021年からタイやインド向けに輸出を始める方針。従来は欧米をはじめマスクをつける習慣がない国が多かったが、コロナ禍で着用義務化の動きが相次いでいる。需要は世界的に高まっており、マスクメーカーには追い風だ。そうした連想もユニ・チャーム株上昇の背景にあったとみられる。
10月23日には一時前日終値比1.6%(80円)高の5128円をつけ、さらに上場来高値を更新した。これを後押ししたのは、前日に使用済み紙おむつを新たな紙おむつに再生する事業を始める、と発表したことだ。リサイクルに積極的な姿勢を示すことで、近年の株式市場でうねりとなっているESG(環境・社会・企業統治)投資拡大の流れに沿うとみた買いが集まった。
まずは東京都と組んで試験的に
再生おむつは2022年に発売する。回収した使用済みおむつから原料のパルプを取り出して新たなおむつを生産する。「ムーニー」など既存ブランドとは別のブランドで販売し、リサイクル品であることを示す。価格は既存品と同程度の見通し。回収は全国の自治体と連携して行う。まず20年度中に東京都と組んで試験的に開始。ユニ・チャームのリサイクル設備で再生産する。取り出したパルプを滅菌し新品パルプと同様の品質に戻す技術を開発したことがカギとなった。
その後の株価は高値警戒感から4900円を割る局面もあったが、10月28日に5000円台を回復するなど好調は持続している(29日終値は4920円台)。コロナ禍に強いため今後も目の放せない銘柄の一つとなりそうだ。