岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
ニューヨークで「トランプ支持」大集会の異常事態

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五番街の車道から消えた「BLACK LIVES MATTER」

   翌日の未明、トランプタワー前の五番街の車道から「BLACK LIVES MATTER」の大きな文字が消えた。この文字は7月、デ・ブラシオ市長とともに市民らが黄色いペンキで制作して以来、何度も赤や青のペンキをかけられたが、今回はコールタールのようなもので塗りつぶされ、文字が判読できない。

   五番街を挟んでトランプタワーの目の前に、午前11時頃からトランプ支持を表す野球帽やジャケット姿で、大きな旗や垂幕を手に人々が集まり始める。女性は全体の3、4割だろうか。

   野球帽の文字は、これまでの「Make America Great Again(米国を偉大に)」も多いが、目立つのが「Keep America Great(米国を偉大なままに)」だ。

   大きな垂れ幕には「TRUMP 2020 NO MORE BULLSHIT(たわごとはもうたくさん)」「2020 ALL ABOARD THE TRUMP TRAIN(トランプ列車にみんなで乗ろう)」などと書かれている。

   前の日の集会で話した女性が、「道路にBLMの文字がないでしょ」と嬉しそうに言う。トランプ支持者の手で消されたようだ。

   それから声を落として私の耳元で、「今日は『ANTIFA(アンティファ=左派から極左の反ファシズム運動で、トランプ支持者と対立する人たち)』が来るらしいから、念のために銃を持ってきたわ」とささやく。

   ニューヨーク市では、許可なく銃を携帯することは禁じられている。何かあったら、流れ弾に当たる可能性もある。

   胸に「Trump 2020」と書かれたTシャツを着た白人女性ローリが、笑顔で私に「今日は来てくれて、ありがとう」と声をかけてきた。私をトランプ支持者だと思ったのだろう。取材だと伝えると、「私はニューヨークでも、このTシャツをいつも着ているの。考えの違う人と対話がしたいから」と微笑んだ。

   「何人かには『人種差別者」と罵られたけれど、思ったより多くの人が他の人には見られないように親指を立てたり、笑顔を向けたりしてくれたのよ」と言う。

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