「裏切り者」と呼ばれるトランプ支持の黒人
到着したBLMのメンバーは、中指を立て罵声を浴びせた。「その帽子を取れ!」「黒人のくせにトランプを支持するのか!」「この裏切り者!」「人種差別者!」
トランプ支持の5人は反応せずに黙っていたが、しばらくすると帽子を被った黒人男性が、「イエスは君たちを愛しているんだよ」「I love you, man.」と声をかけたが、罵声は延々と続いた。
言い合いが激しくなったため、トランプ支持者らとBLM支持者らの間に待機していた大勢の警官が立ちはだかると、今度は黒人警官らに向かって、再び、「黒人のくせになんでトランプ支持者を守るんだ!」などと怒鳴り始めた。
その後、トランプ支持者らはメイシーズデパート前の広場に移動し、他の仲間数十人と合流した。トランプ氏や警察への支持を示す旗やサインを掲げる。彼らの多くが黒人だった。その方が人々を説得しやすいと、考えたのだろう。
彼らの周りに道ゆく人たちが次々と押し寄せ、「お前たちの集会にはそれしか集まらないのか」「レイシスト!」と罵る。黒人たちは「裏切り者」と叫ぶ。
それを受けて、トランプ支持者らは主張する。
「なぜ、白人警官が黒人を殺した時だけ、ニュースになるのか。白人が黒人警官にも殺されているし、黒人警官にも黒人が殺されている。問題は警察組織だ。そして黒人同士の殺し合いの方がずっと多い。B LMの暴徒は黒人の店舗をめちゃくちゃにし、黒人の子供たちの命も奪った。僕はBLMに反対しているんじゃない。でもみんなの命が大事だと言いたいんだ。いい加減、黒人は犠牲者だというメンタリティーを捨ててほしい」
「バイデンが成立させた『暴力犯罪防止・法執行法(1994)』で、多くの黒人が刑務所に送られた。それについてマシューに聞いてくれ」
そう紹介されたマシュー・チャールズ氏(50代、テネシー州在住)は「私は麻薬売買などで35年の刑を宣告されたが、トランプ氏が署名した「刑事司法改革法」(2018年)により釈放され、第二の人生を歩むことができた」と訴えた。
これに対し、20代のBLM支持の女性が、「今も奴隷制度が存在する警察を擁護するトランプみたいな人間を、なぜ支持できるの?」と声を詰まらせて訴える。
どこから持ってきたのか、「FUCK TRUMP」と書かれた大きな幕を掲げて白人青年数人が睨みつけているかと思えば、反対側では「BIDEN PRESIDENT 2020」と書かれた幕を手にアジア系やヒスパニック系の女性数人が立っている。若者の姿が目立つ。
あちこちで激しい怒鳴り合いが起き、警官が一列に並んで間に入る。いつしか、70人くらいの人だかりができていた。
通りがかりの白人男性が、「僕は長年生きてきたが、こんなに分裂しているのを見たことがない」とつぶやく。