ANAも「ビジネス需要、完全には戻らない」 中距離LCC「第3のブランド」に活路

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   コロナ禍で航空各社が大幅な減便を迫られる中、ANAホールディングス(HD)は2020年10月27日に発表した21年3月期の連結業績予想で、最終的なもうけを示す純損益が5100億円の赤字(前期は276億円の黒字)になる見込みだと発表した。

   コロナ収束後も「稼ぎ頭」だったビジネス需要は元には戻らないとみており、ビジネスモデルの転換を迫られる。主力の航空事業では、大型機を予定よりも早く退役させてコストを圧縮。近距離路線を中心に運航する格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションに加えて、新たに中距離LCCを展開し、新たな客層の取り込みを狙う。

  • 「第3のブランド」の中距離LCCでは、ANAで運航されているボーイング787型機を使用する予定だ
    「第3のブランド」の中距離LCCでは、ANAで運航されているボーイング787型機を使用する予定だ
  • 「第3のブランド」の中距離LCCでは、ANAで運航されているボーイング787型機を使用する予定だ

「来年度はあらゆる手を打ち、必ず黒字化を」

   連結業績予想では、売上高は前年比62.5%減の7400億円で、本業のもうけを示す営業損益は608億円の黒字から5050億円の赤字に転落する見通しだ。ANA HDの片野坂真哉社長は、「今年度の業績見通しは非常に厳しいものになりそうだ」とする一方、

「来年度はあらゆる手を打ち、必ず黒字化を実現したいと思っている。新しいビジネスモデルへの変革によって、感染症の再来にも耐えられる、強靭なANAグループに生まれ変わりたい」

などと話した。航空事業での新たな展開のひとつが、「第3のブランド」だ。

   これまでのANA便は「プレミアムエアラインブランド」と位置づける。ピーチは、これまでターゲットにしてきた20~30代のレジャー客に加えて、ビジネス客や、家族客も新たにターゲットにする。ANAのマイルをピーチで使えるポイントと交換できるようにして、マーケティング面でもANAと連携する。

   片野坂氏は

「コロナの影響により、人々の行動が変容し、航空需要の量と質は大きく変わる。ビジネス需要は減少し、完全には戻らない。一方で、レジャー需要は今後も堅調」

と話しており、「第3のブランド」で新たにレジャー需要を取り込みたい考えだ。具体的には、ANA HD傘下でアジアのリゾート路線や貨物便を運航している「エアージャパン」を母体に、東南アジアや豪州へのレジャー客をターゲットにしたLCCの運航を22年度をめどに始める。機材はすでにANAで飛んでいるボーイング787型機を利用し、コストを抑える。

3ブランド間で「カニバリゼーション」起きないか

   中距離LCCでは、傘下にZIPAIR(ジップエア)を持つ日本航空(JAL)が先行する。20年6月に成田-バンコク(スワンナプーム)間を貨物便として運航を始め、9月に貨物便として運航してきた成田-ソウル(仁川)線は10月に旅客便としても運航を始めた。JALで飛んでいたボーイング787型機を利用しているという点でも、ANAの「第3のブランド」と同じだ。片野坂氏は

「競合会社と違って、我々はピーチを10年以上運航してきた実績がある(編注:ピーチの運航開始は12年3月)。新しい会社を設立するのではなくて、すでにエアージャパンという免許を持っている。こういった強みを生かせると思っている」

などとして、ジップエアと差別化を図りたい考えだ。

   課題になりそうなのが、路線が3ブランド間で競合する「カニバリゼーション」だ。例えばピーチは、中距離路線進出の意向をたびたび表明してきた。片野坂氏は

「カニバリを発生させないような路線はアジアには非常にいっぱいある。シェムリアップ(カンボジア)とか、ピーチですら飛んでいないようなところもある。アジア、オセアニアのマーケットは、非常に可能性が高いと思っている」(片野坂氏)

として、すみ分けを図る考えだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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