菅義偉首相が2020年10月26日に行った所信表明演説では、北朝鮮による拉致問題について「引き続き、政権の最重要課題」だとして、安倍政権と同様、条件をつけずに朝鮮労働党の金正恩委員長との首脳会談を求めていく考えを示した。
だが、政権が変わっても北朝鮮側の対日姿勢が軟化する兆しは見えない。9月末には、拉致問題が「完全無欠で不可逆的に解決された」とする声明を外務省が発表。最近になって北朝鮮の宣伝サイトは、菅氏の就任を祝う手紙を送った韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「民族反逆であり、親日売国」などと非難する記事を掲載した。この記事によると、日本は「不倶戴天の敵」で、日朝関係は膠着(こうちゃく)状態が続きそうだ。
北朝鮮外務省、拉致問題は「完全無欠で不可逆的に解決」
菅氏は所信表明演説で、拉致問題について
「全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、全力を尽くします。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します」
などと言及。安倍政権の方針を引き継ぐ姿勢を改めて鮮明にした。
北朝鮮側は拉致問題について「解決済み」だとする主張を繰り返している。北朝鮮外務省は9月29日付けで、日本研究所の研究員名で、菅政権について
「またしても安倍にならって、拉致問題に未練を持ってあちこちに懇願する、奇怪な光景を展開している。馬鹿ですら、結果が明らかなものに執着するのは避けると言われている。改めて明示的に言っておくが。拉致問題は我々の誠意と努力によって、完全無欠で不可逆的に解決された」
などと批判する声明を発表している。
さらに、日本との関係改善に前向きな姿勢を見せた韓国にも矛先を向けた。文大統領は9月16日、菅氏に対して首相就任を祝う手紙を送っている。青瓦台(大統領府)の発表によると、手紙では
「菅首相の在任期間中、日韓関係をさらに発展させるために一緒に努力していこう」
などと呼びかけ、関係改善を呼びかける内容だ。
「基本的価値と戦略的利益を共有するだけでなく、地理的?文化的に最も近い友人である日本政府と、いつでも向かい合って会話して(意思)疎通する準備ができており、日本側の積極的な呼応を期待している」