「しか勝たん」というワードを聞いたことがあるだろうか。
若者の間で浸透し、何かを賞賛する際に用いられるフレーズだが、一方でこの表現を不快に思う人もいるようだ。「よき」や「ぴえん」なども含めて、なぜ流行り言葉が嫌われてしまうことがあるのか、J-CASTニュースはITジャーナリストの井上トシユキ氏に取材した。
「個人の嗜好やキャラクターからその人の近況を表す言葉」
2020年10月下旬現在、ツイッター上では「温泉しか勝たん」「味噌ラーメンしか勝たん」といったツイートが毎分数件のペースでつぶやかれている。この「しか勝たん」 は、AMF(東京都港区)が6月に発表した「JC・JK流行語大賞2020年上半期」の「コトバ部門」では1位に選出され、ユーキャンパスユース(港区)が10月12日に発表した「大学生流行語大賞2020年度上半期」の「コトバ部門」でも2位にランクインした。
その意味について、「大学生流行語大賞」の発表では、
「『〇〇しか勝たん』は元々推しを称賛するアイドルファンの中で使われていたのが始まりで、〇〇に勝てるものはないという意味です。〇〇には好物やハマっているものを入れ、個人の嗜好やキャラクターからその人の近況を表す言葉として多くの支持を得ています」
と説明。用いられるようになった時期は定かではないが、16年8月にはツイッター上で「小笠原茉由しか勝たん」(元AKB48メンバー)などアイドルの賞賛として、16年9月には「チャンジャしか勝たん」(食べ物)などすでに個人の嗜好や近況を表すフレーズとして使われているのが確認できる。
一方で、グーグルの検索窓に「しか勝たん」と入力すると、「しか勝たん 気持ち悪い」とのサジェストが表示される。また、ツイッターでも「しか勝たんっていうフレーズ嫌いです」「しか勝たんって言葉が生理的に無理」など、抵抗を示すユーザーがみられる。
このような傾向は他のワードでもみられる。例えば、同じく賞賛を表す「よき」。16年11月にめざましテレビ(フジテレビ系)で発表された「女子高生流行語大賞2016」で2位にランクインしたが、グーグルのサジェストでは「良き 気持ち悪い」「良き って 言い方 嫌い」などと表示される。
また、「JC・JK流行語大賞2019」のコトバ部門で1位となった、悲しみを意味する「ぴえん」も、ネット上では「最近の奴らはよくもまあこういう気持ち悪い響きの言葉思いつくよな」といった意見をみかける。
なぜこれらの若者言葉を不快に思う人がいるのか、J-CASTニュースは10月20日に井上トシユキ氏に取材した。
ポイントは「媚びるような言葉遣い」と「最先端じゃない」こと
「しか勝たん」「よき」「ぴえん」が一部で嫌われる理由を聞いてみると、井上氏は
「一般的に、媚びるような言葉遣いっていうのでそもそも嫌われますよね。男性女性限らずに、媚びてる感じっていうのは嫌悪感を抱く人が一定数いる」
「しかも、これらの流行り言葉って基本的には去年とかのものですよね。『最先端』じゃないものを使い続けてる人って、『痛いよね』っていうふうな、そうした心理から嫌がられちゃうっていうのがあるんだと思いますね」
と、「媚びてる感じ」と、「最先端」でない言葉を使い続けることへの嫌悪感を指摘した。
また、「『しか勝たん』については6月のJC・JK流行語大賞で1位になるなど、現在も流行している言葉ではないか」と記者が質問すると、
「それが内輪の間で使ってる時だといいんだけど、流行って皆が使うようになると急に冷めちゃうっていうので、例えば『マジ卍』なんかもそうですよね。最初内輪で、それこそ高校生が言ってる間は、内輪の仲間意識みたいなものをつなぐ言葉という感じでしたけども、それが流行って大人とかも使いだすと、急に彼らも使わなくなっちゃいますね、ダサいって感じになっちゃって。『やばたにえん』なんかもその典型でしたよね。すごく寿命が短いっていうか。自分たちの手を離れちゃうと急にダメなもの認定されちゃう。そういう宿命がありますよね」
と、過去に流行した「マジ卍」や「やばたにえん」にも触れつつ、大人が使いだすことで生じる「宿命」について語った。