人は「悲しみ」を「驚き」に変えて耐えようとする
まず、J-CASTニュース編集部は経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏に対し、これら2つの勢力の心理状態について分析を依頼した。
まず、鈴木氏は三浦さんをはじめとする有名人が死去したとの報道に関連して出てくる、これらの「陰謀論」は「妄想の類」と斬り捨てつつ、以下のように説明した。
「『著名な人が突然亡くなる』という現象は、その『著名な人』の個人的事情が一般人には知りえないところからして、多数の『埋めることが出来ない疑問点』が発生します。人間はとかく『因果関係』を知りたがる生き物であり、ゆえに、この『埋めることが出来ない疑問点』というのは心理的に大きな負担となります。そのようなな、負荷がかかった状態の精神には、例え荒唐無稽な内容であっても、それなりに真実を突いているように見えてしまうものなのです」
さらに、「著名人の死」という、人々の心に動揺をもたらす点も、「陰謀論」が受け入れられる土壌があると指摘する。
「三浦春馬さんをはじめ、2020年はたくさんの著名人が突然の最期を迎えましたが、『埋めることが出来ない疑問点』という要素に加え、この『悲しみ』という要素も精神に大きな負荷をかけます。『悲しみ』という負荷がかかると、人間はその『悲しみ』を『驚き』に変えて負担を軽減しようとします。そのような時に悲しみを驚きに変える『変換装置』が、『陰謀論』なのです。悲しみを驚きに変える威力は強ければ強いほど良いので、陰謀論はとにかく奇抜さが強いものが好まれるのです」
さらに、鈴木氏は、これら陰謀論を求める一般人の心理に付け込もうとする人物が、「陰謀論」の発生源となっていると指摘する。
「承認欲求が人一倍強いにもかかわらず、日常生活ではそれが満たされていない人の中には、大きなニュースが飛び出した際に、『その話題に関する言説を発することでリーダーシップを握って承認欲求を満たそう』とする者が一定数います。著名人が突然亡くなるというのは大きなニュースですから、そのニュースの『関連情報らしきもの』を発することで話題の主導権を握り、それでリーダーシップを発揮できたと錯覚し、ガス抜きをしているのです。先程も申しました通り、世間の人々は悲しみを驚きに変えて著名人の死を乗り切ろうとしていますから、そのような鬱屈した思いを抱えている人は世間の需要に合わせて、非日常的で突飛な内容の作り話を繰り出してくるのです」