ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(27)=大橋=の防衛戦が2020年10月31日(日本時間11月1日、以下現地時間)に米ラスベガスで行われる。挑戦者ジェイソン・モロニー(29)=オーストラリア=を迎えての防衛戦で、井上にとって今年の初戦となる。世界の「モンスター」が本場ラスベガスでどのようなパフォーマンスをみせるのか。J-CASTニュース編集部は、協栄ジムの金平桂一郎会長(54)に分析してもらった。
「いつもよりいい意味で気合が入っている」
王者・井上はタイトル戦に向けて国内で実戦練習を重ね10月18日にラスベガス入りした。一方のモロニーは10月2日にラスベガス入りしており、双子の弟アンドリューら5人のスパーリングパートナーを相手に調整を行っている。
「今回はラスベガスですし、1年ぶりの防衛戦で注目度も高い。井上選手にはノックアウトの圧勝が期待される。スポーツ紙などの報道で井上選手の発言をみると、いつもよりいい意味で気合が入っているし、その一方で大きなプレッシャーがかかっているようにも見えます」(金平氏)
井上が防衛戦を予定しているラスベガスでは、10月17日に番狂わせが起こった。世界ライト級3団体王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)がIBF世界ライト級王者テオフィモ・ロペス(米国)に0-3の判定負け。1人のジャッジは10ポイント差でロペスを支持し、この採点は米国内で物議をかもしている。この絶対王者の敗戦は、井上にどのような影響を及ぼすのか。
「今日はパンチがキレているなと思わせたら勝ち」
「ロマチェンコがあのような形で負け、採点についても色々言われていますが、井上選手はあまり気にしない方が良いと思います。余計な力みにつながってしまいますから。力んでしまうとどうしても相手を取り逃がしてしまう。プレッシャーもそうですが、本人がないと言ってもやはり人間ですから。倒さなくてはと思い、つい力が入ってしまうとか。油断ではなく、力んでしまうのが怖いですね」(金平氏)
また、金平会長はロマチェンコ戦を振り返りながら、ひとつの戦略として序盤におけるジャッジへのアピールの必要性を指摘する。
「今回のロマチェンコは序盤の手数が少なすぎた。序盤は本当に大事。1ラウンド目の1ポイントも12ラウンド目の1ポイントも同じ1ポイントですから。井上選手にかぎって手がでないということはないと思うが、手数をバンバン出さなくてもジャッジらにアピールすることも必要となってくる。序盤、ジャッジらに今日はパンチがキレているなと思わせたら勝ち。ジャッジらに印象付けるようなパフォーマンスは大事である」(金平氏)
「打ち合うよりはアウトボクシングの方が...」
挑戦者モロニーは21勝18KO(1敗)を誇るハードパンチャーであり、タフな一面も持ち合わせる。母国オーストラリアのメディアに対して「KOする自信はある」と語っており、王座奪取へ並々ならぬ意気込みを見せている。果たしてモロニーは「モンスター」からベルトを奪うことが出来るのか。金平会長は「モロニーの戦力では正面突破して勝つことは不可能」と断言した上で、次のように語った。
「モロニーはとりあえず軽打を集めてポイントを寄せていってうまく動いていくしかない。おそらく打ち合いにはこないでしょう。打ち合うよりはアウトボクシングの方が可能性はある。それでもモロニーの勝ちは想像出来ません。モロニーは最後まで立っていれば実質勝利だと思う。今回の世界戦は世界が注目しており、モロニーの知名度も上がる。無様な姿を見せずに最後まで立っていればモロニーの評価は上がるでしょうし、次につながります。陣営もそれを理解していると思います」(金平氏)