「核のごみ」受け入れに手挙げた2町村 今後のプロセスは?

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   原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を巡り、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村の2町村が、選定手続きの第1段階となる文献調査の受け入れに手を挙げている。

   ごみがたまる一方という状況に危機感を抱く国が、交付金の増額などあの手この手で自治体に働き掛けてきた成果が表れた形だが、建設地決定は約20年がかり、操業開始までは30年を要する大仕事であり、最終的に建設地になるのかは現時点で見通せない。

  • 寿都町の弁慶岬(DrTerraKhanさん撮影、Wikimedia Commonsより)
    寿都町の弁慶岬(DrTerraKhanさん撮影、Wikimedia Commonsより)
  • 寿都町の弁慶岬(DrTerraKhanさん撮影、Wikimedia Commonsより)

議論広げることに意欲

   寿都町の片岡春雄町長は2020年10月9日、処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO=東京)を訪れ、文献調査への応募書を提出。神恵内村の高橋昌幸村長も同日、経済産業省から文献調査の申し入れを受け、15日に調査受け入れの文書を経産省に送った。応募は2007年の高知県東洋町(住民の反対で後に撤回)以来13年ぶり。

   両町村は典型的な過疎の町村で、「交付金は魅力的だ」(片岡町長)、「交付金で村の経済を回していきたい」(神恵内村商工会)と、交付金が大きなインセンティブになっていることを隠さないが、片岡町長は「(核のごみ問題に)一石を投じる。議論の輪を全国に広げたい」と、国民的な議論のきっかけにとの思いも語る。

   核のゴミの処分については、核燃料サイクルとして、原発で使用済みの核燃料から再利用できるプルトニウムとウランを取り出した後、その廃液を高温でガラスに溶かして金属容器に入れて固化。これを、地下300メートル以上の深度の「安定した地層」に埋める――というのが日本の基本方針だ。その処分場の選定が難航して、ごみの捨て場所がない状態は「トイレのないマンション」とも形容される。

   処分場選定のプロセスは次のようなものだ。

「文献調査」は地震の記録などから

   まず第1段階の文献調査は、期間が約2年で、地質図や歴史的な文献で過去の地震の記録などを調べるとともに、住民との「対話の場」を設け、数キロ四方の敵地を探す。これで最大20億円の交付金が支払われる。これでOKとなると、第2段階の「概要調査」に進み、約4年をかけてボーリングなどの調査を実施、交付金は最大70億円。最後の「精密調査」は地下施設を建設して調査・試験を実施する。期間14年で、交付金は現時点では未定。それぞれの段階で、市町村長と知事の同意がなければ次の段階には進まないとされる。

   国は2007年に調査受け入れ自治体への交付金を引き上げ、2017年には活断層や活火山の状況といった地質学の視点のほか、核のごみの輸送、金属などの鉱物資源の採掘への影響なども勘案し、処分地としての適性を示した「科学的特性マップ」を作成し、自治体への働きかけを強めてきた。この間、全国120カ所で対話集会を開いて住民に理解を求めてきたほか、水面下では大手電力会社に管内1カ所以上の候補地を出すよう促すなど、選定作業を前に進めようと躍起になっていた。

   国が焦るのは、核のごみを巡る切迫した事情がある。1995年から日本原燃の施設(青森県六ケ所村)に核のごみが随時運び入れていて、ガラスで固化した状態で2176本が保管されている。ただし、これはあくまで「一時保管」で、県・村と日本原燃の協定で、搬入から30~50年で各電力会社に引き取らせるとしており、1995年に搬入されたものは2045年に期限を迎える。今後、日本原燃の再処理工場が稼働して使用済み燃料の再処理が進めば、ごみはどんどん増え、行き場を失ってごみがさまようことになりかねない。そんな事態は何としても避けたいというわけだ。

「複数応募」こだわった経産省

   今回、経産省は、東洋町の教訓も生かし、注意深く準備してきた。各地の説明会を実施する中で、関心を示す自治体には勉強会や講演会などの費用を、NUMOが支援しており、2019年から、寿都町の勉強会には北海道経産局の職員、神恵内村の商工会の勉強会にはNUMO職員が参加してきた。東洋町では、全国初、しかも1自治体のみの動きだったことから全国の注目を集め、反対運動が一気に燃え上がった。その二の舞を避けるため、複数の自治体の同時応募の形にすることに経産省は腐心したという。処分場に関心を示す自治体は「80団体以上」(梶山弘志経産相)といい、経産省は、さらに10自治体程度が手を挙げることを期待している。

   とにもかくにも、経産省の「奮闘」で、処分場選定に向けた第1歩を踏み出したのは間違いないが、先行きは不透明だ。

   まず、両町村の立地条件だ。「科学的特性マップ」では、神恵内のほとんどの地域が「適地」にはふくまれず、わずかな適地にも巨大な施設の建設には向かない小高い山が連なる。寿都町は適地とされる平地が少なく、反原発団体などから、調査対象として意味があるのか、疑問視する声も出る。

   「放射性廃棄物の持ち込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたいことを宣言する」と明記する北海道の「核抜き」条例(2000年制定)もある。持ち込みを禁じてはいないなど、「実効性がない」(片岡町長)とも指摘されるが、鈴木知事は概要調査に進む際には「反対する」と明言しており、知事の反対を押し切って進めるのは容易ではない。

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