VTuber(バーチャルライバー)プロジェクト・「にじさんじ」を運営するいちから(東京都千代田区)は、所属ライバー「金魚坂めいろ」さんとの契約解除の経緯について2020年10月21日に発表した。
似た「なまり」で世界観が崩れることから差別化を図りたいとの意向
6月に所属ライバーとしてデビューした金魚坂さんは、9月3日から活動を休止していた。24日には配信にて事情を説明し、「嫌がらせの域に届いてしまいそう」なことがデビュー直後から起きていたことを語ったが、具体的に何があったかは明言しなかった。
その後の10月19日、金魚坂さんの違反行為を起因とする契約解除がいちからより発表されたが、ここでも事実関係については明らかにされず、ファンの間では憶測と混乱が広がっていた。J-CASTニュースも20日、取材を申し込んでいたが、21日夜までに回答はなかった。その後、J-CASTニュースの記事が公開された約1時間半後、いちからは「にじさんじ」公式ツイッターアカウントを更新し、説明を求める声に応える形で、「可能な範囲」で経緯を説明した。
それによれば、発端としては所属ライバー「夢月(ゆづき)ロア」さんと「なまり」の被りがあったのだという。
「7月下旬、夢月ロアから『金魚坂めいろの配信における、夢月ロア特有のなまりに似た口調を可能な限り訂正して欲しい』との要望を受けました。本人曰く、夢月ロアの口調は現実に存在する『方言』や『なまり』に依拠するものではなく、自らが創作した世界観の『魔界』特有の『なまり』であることから、他者が『魔界なまり』に似たなまりを使用することで『魔界』出身という夢月ロアの世界観が崩れることから差別化を図りたいとの意向によるものです」
「一方で、同時期に金魚坂めいろから、当社に対して『金魚坂めいろの口調は育った環境から身に付いた本来の方言であり、配信にて緊張してしまう中で自然と話してしまうものであるため、意図的に夢月ロアのなまりを真似しているわけではない』という説明がありました」
「そうした状況が続く中で、金魚坂めいろより、当社の公式声明として金魚坂めいろの口調は模倣ではない旨を発表することを要望するとともに、この発表がなされないのであれば、にじさんじから『卒業』する、との連絡を受けました」
「しかし、当社としては、所属バーチャルライバー同士の関係性について公平な姿勢をとる必要があり、夢月ロアならびに金魚坂めいろ双方に折衷案を提示するとともに、金魚坂めいろが希望するような公式声明を発表することで事態が改善することはないと判断し、上記公式声明の発表は実施しないことといたしました」
こうした公式発表の不実施を受けて、金魚坂さんは9月上旬に1回目の契約解除を申し入れたとした。
金魚坂による、二度にわたる「秘密保持義務違反」
金魚坂さんは「約1週間後」に再び活動再開を希望したが、その後の配信で許可を得ないまま別のライバーから嫌がらせを受けていたことをにおわせる発言をし、契約の解約に向けた話し合いがあったことについて語ったという。
これが指すとみられるのは、前述の9月24日の配信。実際に見てみると、運営の許可は得たとしたうえで、「活動の休止はアンチのせいではないか」とする向きについて否定し、「嫌がらせ」についても「運営さんが悪いわけじゃない」と説明。ファンからは他ライバーが原因だと疑う声も出ていた。また、問題について運営と話し合いをした上で、引退を一度決意したことを明かしていた。
こうした発言が秘密保持義務違反にあたるといちからが判断し、活動休止を提案したところ、金魚坂さんは9月末に再び「卒業」を申し入れた。
ここからまた「約2週間後」、金魚坂さんは「卒業」の取りやめを要望したが、いちからは「信頼関係の再構築が困難」だとして、要望の受け入れは難しいと判断した。さらにこうした経緯について、公式発表の前に社外の配信者がユーチューブで公表。そこには金魚坂さんにしか知り得ない情報や画像があったことで、これも本人が第三者に漏えいしたものとして判断し、二度にわたる秘密保持義務違反から、改めて契約解除の通知を行ったという。
発表では具体的な名前は挙げられていないが、契約解除の発表があった前日の10月18日には「にじさんじ」非所属のVTuber「鳴神裁(なるかみさばき)」さんが、上記のような経緯について、金魚坂さんと他ライバー間のやりとりの様子だと思われる画像を添えながら「暴露」として紹介し、話題となっていた。
いちからは今回の発表の中で金魚坂さんと夢月さんとのやりとりについても説明し、騒動についてファンに向けて謝罪した。また約1時間後、夢月さんもツイッターを更新。「いつも応援してくれてるファンの人に迷惑をかけてしまった事を心から謝りたいです」と謝罪しつつ、「なまり」をめぐる金魚坂さんとのチャットのスクリーンショットを投稿している。