サッカー・スペイン1部ビジャレアルの日本代表MF久保建英(19)がイエローカード2枚で「退場処分」を受けた判定をめぐり、賛否が分かれている。結果的に相手選手の太ももに足が入ったが、先にボールに触れたのは久保。ファウルは故意ではなかったという声は少なくない。ビジャレアルのウナイ・エメリ監督も処分の取り消しを要求する意向だと報じられている。
久保の退場は妥当な判定だったのか。なぜイエローカードが出されたのか。審判批評家で、DVD「審判」のプロデュースも手がけたサッカージャーナリスト・石井紘人氏が分析する。
「『チャレンジの仕方』が問われます」
久保は2020年10月18日、リーグ第6節バレンシア戦(2-1)に後半19分から途中出場。同24分にヒールパスでMFダニエル・パレホのゴールを演出したが、その後30分足らずで2度の警告(イエローカード)を受けて退場した。まず27分、相手のロングボールに、久保が胸の高さほどまで左足を上げると、やや屈んでヘディングしようとした相手DFホセ・ルイス・ガヤの頭に当たり1枚目のイエローを受ける。
そしてアディショナルタイム、相手陣内でボールを受けた久保だが、ドリブルのタッチが長くなり、自ら左足でスライディング。そこにほぼ同じタイミングで、相手MFカルロス・ソレールもスライディングしに行った。先にボールに触ったのは久保だが、直後に久保の左足裏がソレールの右太ももに当たりホイッスル。2枚目のイエローカードが提示され退場となった。こうした退場劇、特に2枚目の判定をめぐっては、久保がソレールより先にボールに触れたことなどから賛否が分かれた。
2枚のイエローカードは妥当な判定だったのか。石井紘人氏はJ-CASTニュースの取材に「1枚目のイエローは仕方がない。かと言って一発レッドでもなく、妥当な判定だと思います」とするも、2枚目の場面については「難しいですね」と話す。石井氏は(1)久保のスライディングで審判が重視したポイント(2)一発レッドではなく2枚目のイエローだったこと(3)試合を通じたジャッジの傾向――という観点からこのシーンを分析する。まず(1)の点についてこう話す。
「スライディングの時、久保選手とソレール選手はボールに対して50:50くらいの距離でした。リプレーを見ると久保選手はスライディングでボールを触った後、相手が来ているのが見え、『足を畳もうとした』と思います。しかし畳み切れず、畳もうとした動きが、主審の心証としてはおそらく『足を上げた』ように見えた。実際、久保選手の足裏が太ももをスパイクしてしまっています。なので主審は『無謀な方法でのプレー』という判断で警告を出したのでしょう。
先にボールに触ったのが久保選手だったことは、レフェリーも見ているはず。ただ、先に触れば何をしてもいいわけではなく、『チャレンジの仕方』が問われます。レフェリーとしては、久保選手が相手を顧みずに無謀な方法でチャレンジしたと判断し、警告としたのでしょう。
意見が分かれる一番の理由は、この視点の違いだと思います。久保選手のチャレンジを見ている人には『警告でも仕方ない』と思うし、久保選手のプレーの結果と足の入り方を見ると『それほど危険じゃない』と考える。レフェリーによっても、全員がイエローを出すという場面ではないでしょう」(石井氏)