「恋愛禁止」は作られたルール?
ファンの本音は、立派に活動してきたアイドルであれば異性との交際や結婚も構わないと思っている。その傾向は70年代から現代まで続いている。であればなぜ恋愛禁止という掟は運営・メンバー・ファンに共有され、例えばファンとアイドルの交際が暴露されればスキャンダルだと騒ぐのか。
これについてはこじらぶさんは、2000年代特有のアイドル文化草創期のファン層を意識したのではと指摘する。
「秋元康氏の恋愛禁止ルールは最初は秋葉原の劇場に通ってくれる正真正銘のオタク、おじさん層がターゲットでしたからイメージ戦略として当然あったと思います。可愛くて処女性が高く彼氏がいないなんて現実ではあまりいませんし。実際自分と触れ合ってくれて優しくしてくれるわけですから貢いであげたくなってしまったと思います」
「そこからAKBが国民的アイドルになって以降、坂道もですが、コテコテのオタクの比率はだいぶ下がり、いわゆる一般の、普通の人や、可愛い女の子、イマドキ男子すらもオタク現場(編注:ライブ会場など)に来るようになりました。そういう人たちはわりと現実が見えているのではないでしょうか。男が寄ってこないはずがないけど、せめてルールはあるのだからバレないようにやってくれという。そこが意外なほどオタクが恋愛禁止を許せるというアンケート結果になったと思います」
当初は高嶺の花ではなく、ライブハウスの近距離で触れ合えるアイドルのファンを男性層として想定、それが実績を積んでいくうちに同性のファン層やライト層が増えていくというこじらぶさんの指摘は肥留間氏の分析とも似通っている。
「今はアイドルはグループが主流ですから、自己責任では済みません。グループイメージをそこなったり、マジメに頑張っている他のメンバーも疑われたりなど迷惑をかけることになるので、そこも叩かれるマイナスポイントになると思います」(こじらぶさん)ということで、グループアイドルであればメンバー本人のみならず他のメンバーのファンにも騒動が及ぶ「火種」が用意されている時代だ。
世の中は芸能人の恋愛に寛容になっているし、「推し」の決断を尊重したいファンの本音は変わっていない。ただ擬似恋愛要素を押し出すようなアイドルの売り方やグループアイドル化といった雑音で、百恵さんの時代のように素直にファンがメッセージを贈ることは難しくなっているのかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)