JR東日本は来春のダイヤ改正で、東京駅から100キロ圏内のほぼすべての在来線で終電時刻を30分程度早める。JR西日本も来春、主な在来線の終電を10~30分繰り上げると発表、終電を早める動きが広がっている。
新型コロナウイルス問題で乗客が減少していることなどが要因だが、コロナ禍に苦しむ飲食店などへの影響、「終電難民」の発生も懸念されている。
設備保守の負担軽減も目的?
JR東が首都圏の路線で終電を一斉に繰り上げるのは同社発足以来初めてといい、コロナ禍の影響の大きさをうかがわせる。同社によれば、テレワークの普及などで乗客は減少し、午前0時台の山手線の利用者はコロナ前に比べ6割以上も減少しているという。同社は「鉄道需要が完全に戻ることはない」とみており、利用客からも「需要減に応じたやむを得ない改正だ」と理解を示す声が少なくない。
ただ、コロナの影響もさることながら、別の事情も関係しているようだ。ある関係者は、終電繰り上げの最大の狙いは乗客減への対応より、むしろ「設備の保守点検に当たる作業員の負担軽減のためだろう」とみる。保守点検は基本的に、終電後に実施するが、深夜勤務であるだけでなく、作業は重労働で、人手不足が深刻な近年、作業員の確保に苦労していた。終電が30分早まるだけで作業員の休み時間確保など労務環境の改善につながるのだという。
ただ終電時刻を早めれば、影響は社会のさまざまな方面に生じる。コロナ禍で打撃を受けた業界を政府が支援する「Go Toキャンペーン」は始まったが、ほとんどの飲食店の客数はコロナ前には戻っておらず、店によっては終電切り上げはさらなる逆風ともなり得る。
また終電間際まで勤務している人たちの中には、「会社からタクシー代は出ないので、仕事が終わらなければ会社に泊まり込まなければならない」と不満も出ている。タクシーや深夜バスにはメリットがあるとの見方もあるが、「タクシーにお金を落とせる人は限られており、ネットカフェやカプセルホテルに流れる人の方が多いのでは」と話す企業関係者もいる。