せんすマスクに気付くと、その瞬間は驚かれるが...
原因はすぐに分かった。せんすマスクを全開にしているからである。せんすマスクは全開にすると150度前後の角度で開くのだが、開いた板の全ては人差し指で支えることになり、板の重量の大半を人差し指で支えることになるのだ。つまり、人差し指にかかった負荷がそのまま人差し指の腱にかかり、その結果、右手でせんすマスクを持っていた筆者は右肩が張ってしまったのである。
そこで、せんすマスクの角度を80度前後にして口元にかざしてみると、右肩の張りはピタリと収まった。乗車後数分で肩が疲れ始めたものの、角度を小さくすれば問題ないことが分かったわけだが、そうなると、電車よりも長時間乗ることになるであろう飛行機に乗る際には、電車に乗る時以上にせんすマスクの開く角度にこだわった方が良さそうだ。
そのようなことを考えていると、徐々に電車は減速。いよいよ、停車駅が近づいてきた。誰にも視線を向けられないまま停車駅に到着するのかなどと考え始め、やや油断した気分になった矢先、筆者から見て斜め左側の反対側の座席から、ついに、「視線」が飛んできた。
視線を飛ばしてきたのは30代前後とおぼしき女性。それまでスマホに夢中で下ばかり見ていたが、ふと、こちらのせんすマスクに気付き、一瞬、ギョッとした表情を浮かべたのだ。しかし、すぐに、何かを悟ったような表情になり、再び視線をスマホに向けたのだった。これは......恐らく、せんすマスクに貼り付けられた「マスクが苦手です」の文字が目に入ったからだろう。
初の視線を浴び、「やっと注目された!」と、よく分からない喜びが込み上げる中、電車は停車駅に到着。ついに、新たな乗客が乗り込んできた。そして、目の前の座席に、50代前後と思しき男性が着席。すると、早速筆者の「平安貴族状態」に気付き、やはり、ギョッとした表情に。しかし、先程の女性と同様、「マスクが苦手です」の文字ですぐに状況を察したのか、すぐに表情は通常のものとなり、やはり、スマホに視線を落としたのだった。