岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 「コロンブスの日」めぐる祝意と抗議の現場

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13州はこの日を祝わず

   私たち日本人の多くも長年、「アメリカ大陸を発見」したと教えられてきたコロンブス。彼がアメリカ大陸周辺諸島に到達したことは、ヨーロッパ側から見れば「新世界発見」だったことから、そう語られてきた。

   彼にちなんで名付けられた都市や道、公園などが、全米に数多くある。私が大学時代に留学したのは、中西部オハイオ州コロンバスのすぐそば。南西部ジョージア州コロンバスにも、長く滞在したことがある。私が今これを書いているのは、ニューヨーク市コロンバス・アベニューから1ブロックの場所だ。

   「コロンブスの日」は、1937年に連邦政府公式の祝日となり、その後、10月第2月曜日に変更された。全米で大規模なパレードが行われるが、今年は新型コロナウイルス感染防止のために中止となったところが多い。

   コロンブス到着以前のはるか昔から、アメリカ大陸には先住民族が住んでいた。それを「発見」と表現するのは、ヨーロッパを視点としたものだ。しかも、住民以外でアメリカ大陸を最初に訪れたのは、コロンバスではないとされている。また彼はこれをアジアだと勘違いしたうえ、大陸本土の存在に気づかなかったばかりか、上陸もしていない。

   コロンブスはカリブ諸島で先住民を弾圧し、大虐殺を指揮した。十分な黄金を差し出さない場合には、手首を斬り落としたとも言われる。奴隷商人だった彼は、大陸でも奴隷を売買した。

   今では「コロンブスの日」の代わりに、「先住民の日」を祝う州や都市が増えている。サウスダコタ、アラスカ、アイダホなど少なくとも13州では、「コロンブスの日」を祝っていない。コロンブスを自分たちの「遺産」と見なすイタリア系アメリカ人の多くは、こうした動きに反発している。

   イタリア系アメリカ人のアントニオ(64)は、「負の遺産もわかるが、コロンブスの功績があるから、今のアメリカがある。コロンブス像は、僕らイタリア系移民の遺産や貢献の証でもあるんだ」と、近年の動きを嘆く。

   「名誉あるイタリア系やイタリア人」は他にもいるとの議論は、前々からあった。

   ニューヨークでは今年のこの日、1889年にイタリアから米国に渡り、移民や貧しい人たちのために奉仕した聖フランチェスカ・ザベリオ・カブリーニ修道女の像の除幕式が行われた。

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