横浜市内で起きた異臭騒ぎで、市が検出したと発表したペンタン、イソペンタンなどの化学物質について、その発生源はどこなのかとネット上で関心を集めている。
聞き慣れない名前だが、シェービングフォームやインクなどに使われているという。これらの物質がカギを握るのか、調査した横浜市環境科学研究所に話を聞いた。
ペンタンは発泡剤やインキ、イソペンタンはシェービングフォームに使われるが...
「ガスのような臭いがする」「ゴムが焼けた臭いがした」。JR横浜駅などで2020年10月12日夕、こんな異臭がしたとの119番通報が相次ぎ、16件に達した。
横浜市保土ケ谷区にある消防局本庁舎でも、同様な異臭を確認したため、職員がその場で空気を採取し、市環境科学研究所で分析を行った。
高純度窒素ガスで空気を希釈した後、ガスクロマトグラフの質量分析計と水素炎イオン化検出器を使ったという。
その結果、ガソリンなどの蒸発ガスに含まれるペンタンやイソペンタンが通常より10倍以上、ブタンも3倍近く、また、化学製品の原材料などを燃やしたときに発生するエチレンとアセチレンも2倍以上、と高濃度で検出された。市は13日夕に会見を開いて、この結果を発表している。
こうした情報がニュースサイトで流れると、これらの物質はどこあるのかと関心を呼び、コメント欄などでは、「原因がわからないというのは怖い」「臭いの元が人工のものか、地中からのものか」「人工的な異臭なら、早く調査して解決してほしい」などと書き込まれている。
薬品メーカーなどのサイトを見ると、ペンタンは、発泡スチロールなどを作る発泡剤や接着剤、印刷用のインキなどに使われる。イソペンタンは、シェービングフォームや冷却スプレーなどに使われている。
「石油化学工場にあるが、未検出物質もあり、異臭の原因と言い切れない」
ブタンは、ガス缶やライターなどに、エチレンは、化学繊維の原料などに、アセチレンは、金属を溶接するバーナーの燃料などに、それぞれ使われている。
これらの物質がどんなところにあるのかについて、横浜市環境科学研究所の百瀬英雄所長は10月14日、J-CASTニュースの取材にこう話した。
「いずれも、工場で使われており、石油の精製で分離されます。石油コンビナートなどがそうですが、これらが異臭の発生源とは言い切れません。分析に使ったガスクロマトグラフの装置では、つかみ切れていない物質が存在する可能性があるからです」
その理由としては、分析装置は、ターゲット物質を検出するためのもので、他の物質を検出するためには、様々な装置が必要だからだという。
ペンタンやイソペンタンは、ガソリンのような臭いもするといい、ブタンは、ガス臭くなる。エチレンは、果物のように微かに甘い匂いがし、アセチレンも微かな芳香がすることもあるという。
通常より多く含まれていたのがペンタンやイソペンタンで、ブタンも臭いが、だからといって、異臭の原因とは必ずしも言えないと百瀬所長は言う。
「ごく微量でも臭う物質が他にもあり、検出できなかった可能性もあります。また、濃度によって、臭い方も変わります。今回初めて採取できましたので、三浦半島で6月からあった異臭と同じ成分かも分かりません。発生源は、まだ分かっておらず、採取した空気は分析でなくなってしまいましたので、調査は始まったばかりになります」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)