「今回は評価が難しい」
今回のオランダ遠征も、コートジボワール戦に左SBで先発した中山の本職はボランチ。現にカメルーン戦ではボランチで先発しており、左SBには本職の安西が入った。いずれもスタートの布陣は4-2-3-1。石井氏はまず両選手の守備面について「カメルーン戦の安西選手は、守備時に左サイド(カメルーンの右サイド)から押し込まれるシーンが何度かあった。一方、コートジボワール戦の中山選手の守備は良くやっていた」と話す。
「たとえばポジショニングですね。安西選手は攻め上がりで穴をあけがちで、そこを狙われてしまった。対して中山選手は前に出すぎず、守備のバランスが崩れることはあまりなかった。ペペ(25=アーセナル/イングランド)という世界レベルの選手とマッチアップしましたが、決定的な仕事はさせませんでした。中山選手はU-23代表(東京五輪代表)で主将を任せているし、もともとDFだったので左SBに抜擢したのだと思います。CBからボランチまでできる守備のユーティリティプレーヤー。佐々木翔選手を左SBで起用するのと同じ感覚でしょう。コートジボワール戦を見ると、中山選手をまた今後も左SBで使うかもしれません」
攻撃面では2人をこう評価する。
「安西選手はもともと攻撃的なタイプですが、カメルーン戦で持ち味が出せたかというと微妙です。中山選手は左サイドに入ったMF久保建英選手(19=ビジャレアル/スペイン)と良い距離感を保ち、久保選手の攻撃をスムーズにさせていたし、良いオーバーラップ、インナーラップもありました」
石井氏は「この2人でどちらが良かったかというと中山に軍配が上がると思います。安西選手はそれこそ左SBの後継者として期待されているし、本人にとっては悔しいオランダ遠征だったでしょう」というが、「今回は評価が難しい」とも話す。
「森保監督はそもそも攻撃の連携がタレント任せというか、ビルドアップから展開する形がまだできていません。タレントが噛み合うと良い試合をしますが、それができないと途端に何も生み出せなくなります。一方、守備組織は洗練されてきています。それだけに左SBも、攻撃より守備で粗があると目立ちます。攻撃ができるSBより、守備ができないSBのほうが、今の森保監督のサッカーでは目立ちやすい。
その点、安西選手の持ち味は攻撃力。カメルーン戦前半は日本代表全体として攻撃の形を作れなかったので、SB個人で打開するのは難しく、持ち味を発揮しづらかったでしょう。かつ、カメルーン戦は、新型コロナウイルス禍のため欧州組だけで編成した急造チームの1戦目。結果を出すのは難しい状況であり、この試合で安西選手がダメだったとは言えません」