2回目の大統領候補討論会は中止
「討論会」では、何をどのように主張し、相手の攻撃をどのようにかわすかが注目される。しかし、その前に誰に投票するか決めている人も多く、またすでに投票を済ませた人もいて、討論会が実際に選挙結果にどれだけの影響を与えるかは疑問だ。
しかも今回、そして前回の大統領候補の討論会でも、質問の答えになっていない発言も多く、双方の主張に誤りや誇張が目立った。何が事実で何が違うのか、多くの有権者には判断できないこともある。
外での取材を終えてアパートに戻ると、トランプ氏を支持するドアマンが私に言った。
「討論会でペンスは、しゃべり過ぎだったと言われてるな。野球だって何時間も試合するんだ。延長戦もある。大統領選は、国家の一大イベントだろ。1つの質問について2分しか話す時間がなんて、何をそんなに急いでるんだ? しゃべりたいだけ、しゃべらせてやれよ。そして、factcheck(ファクトチェック=事実かどうか検証)する人間が会場にいて、ウソを言ったらランプが光って、その場でバレる、ってのはどうだ?」
討論会後にファクトチェックするメディアやサイトはいくつかあるが、その信憑性も問われる。公正なファクトチェックをその場ですることはテクノロジーを駆使すれば、近い将来、可能になるかもしれない。
10月15日に予定されていた大統領候補の第二回討論会は中止と、9日、発表された。トランプ氏の新型コロナウイルス感染を受け、オンラインでの開催が提案されたが、トランプ氏が対面式にこだわり、第2回と第3回を一週間ずつ延期することを提案。バイデン側がこれを拒否した。3回目となるはずだった22日の討論会が、2人の最後の顔合わせとなる。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。