格差社会「戦犯」扱いに「ないことないことを言われるのは...」
――竹中さんは、小泉政権時代に経済財政相や総務相、郵政民営化相として、構造改革の名の下に規制緩和を進めておられます。竹中さんのツイッターでは、労働者派遣法の改正による製造業の派遣解禁は、当時の厚労省が決めたことだと説明しておられましたが、なぜ格差社会を作った戦犯のように言われるとお考えでしょうか?
竹中:実際に、派遣労働の解禁は、厚労省の所管で、まったくタッチしていないですよ。格差社会の戦犯のように、ないことを言われるので、だから民間の人は、大臣をやりたくないんだと思います。私は、政治家になりたいと思ったことは1回もないですから。ただ、小泉さんという特別な総理大臣が就任されたので、この方の下で頑張ってやろうと思いました。サッカーで言うレンタル選手ですよ。この大会のときだけ、他のチームを連れてきていいという人はいるでしょ。それだと、私は割り切ってやっていました。ないことないことを言われるのは、人の悪口言うのを面白がる人がいるってことですかね。それと、一部には、規制緩和による公共事業の削減などで利益を失う人がいるわけですよね。いわゆる既得権益者から見ると、すごく腹が立つんじゃないですか。
――大臣を辞めて政界を引退してから、1年ぐらいで人材派遣大手パソナの特別顧問になられました。パソナは、製造業派遣をやっていないとツイッターで強調されていましたが、天下りにも当たらないとの認識なのですか?
竹中:パソナは、関係先じゃないですよね。天下りとは、権限を持っている省庁の人がその権限を使って人を送り込むことを言うわけです。私が大臣として規制緩和を進めたのは郵政ですから、もし郵政のトップになったら、批判されるでしょう。役所の権限を使って何かするのはよくないけれども、そうじゃない形でその人の能力が買われていろんなところへ行くっていうことは認めるようになったわけですよね。役人でも今はそうなっているわけで、それは職業選択の自由を役人から奪っちゃいけないですよね。新聞社やキー局の人が地方のテレビ局などに行く方がよっぽど天下りじゃないですか。
竹中平蔵氏 プロフィール
たけなか・へいぞう
東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授、パソナグループ会長。1951年、和歌山市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後、日本開発銀行に入行。米ハーバード大学客員准教授などを経て、2001~06年の小泉純一郎政権で経済財政相、総務相、郵政民営化相などを歴任した。