「自助の人」が多いほど、本当の弱者を助けられる
――こちらの案ですと、全員が国民年金の支給額レベルに下がり、生活保護も実質切り下げられて、結果として単なる社会保障の削減になるのではないかとの指摘もあります。結局は、若い人を中心に自助の努力をせよということなのでしょうか?
竹中:社会保障の削減ということは、まったくないですね。普通、こんなことをすれば財政負担が増えると言われています。このことは制度設計次第でして、年金を積み立てた分は保障しながら、ベーシックインカムに切り替える、ということです。生活保護も、それを補うものとしてあっていい。税金の率というのは累進課税で行い、所得が高い人には高い税率を課し、低い人にはマイナスの税率でお金を支給するシステムになります。菅総理が自助という言葉を使われた途端に、自助とは「弱者切り捨て」と言われましたが、それはまったく逆でね。これは小泉純一郎元総理がいつも言っていたことなんですが、自ら助くる者がたくさんいればいるほど、本当に助けが必要な人を助けられる。本当の弱者を助けるためには、自助の人ができるだけ多くいなければならないんです。それは、どんな社会になっても、普遍の原理ですよね。弱者切り捨てという論理の飛躍には、ちょっと唖然としますね。
竹中氏は、ベーシックインカムについて、「究極の税と社会保障の一体改革」と呼んでいる。社会保障でもあり、負の所得税として税制でもある公平な形だという。前出の原田氏は、その著書の中では、「給付と税が一体の制度」だとしていた。
――竹中さんの案には、所得制限をして、高所得者は後でお金を返すとあり、これでは全員支給のベーシックインカムとは言えないのではとの指摘が出ていますが、どう考えますか?累進課税制度を竹中さんも支持されていますので、それで所得が高い人も対応できるとは考えられないのでしょうか?
竹中:いや、ベーシックインカムは、徹底した累進課税なんです。前もってそれをあげて高所得者が後から返すのか、後からそれを必要な人にあげるのか、それはどちらでもよいと思います。こうした手続きは楽な方がいいですから、とりあえず一斉に渡して、後から確定申告で返させるというのは悪い方法ではない。最初は渡さないで後から渡すのでもいいんですけど、それではその間に困る人がいるじゃないですか。だから、とりあえず先に渡す方がいい。まさに弱者のためですよね。誰が弱者であるかは、分からないわけですから。