東京・池袋で母子2人が死亡、9人がけがをした暴走事故の初公判で、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告(89)が無罪を主張し、ネット上で様々な意見が噴出している。
遺族は、被告が2人の死に向き合っていないとして会見で実刑判決を求めたが、被告の主張はどこまで通るのだろうか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に裁判の見通しを聞いた。
「示談ないなら、禁錮3年6月から4年の求刑になる可能性」
新聞各紙などの報道によると、2020年10月8日に東京地裁で行われた初公判で、飯塚被告は、悲惨な事故を防げなかったことにお詫びの言葉を述べたものの、事故そのものについては、「車の何らかの異常で暴走したと思っております」と述べた。
そして、飯塚被告は、19年4月19日に起きた事故で自らがアクセルをブレーキと間違えて踏み続けたとした起訴事実を否認した。自らが問われている自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪について、無罪を主張している形だ。
「検察の求刑は、金銭賠償による示談ができているかどうかが結構大きいと思います」
両者が刑罰を巡って対立する展開になったことについて、若狭弁護士は9日、こんな見方をJ-CASTニュースの取材に示した。
「示談ができていないなら、過失の程度が大きく結果が重大ですので、禁錮3年6月から4年の求刑になる可能性が高いでしょう」
自動車運転処罰法の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮などとなっており、運転操作ミスなら禁錮、飲酒・無免許なら懲役が適用されるという。もし示談ができているとすると、その内容によるが、遺族の処罰感情が厳しいため、禁錮3年ぐらいの求刑になる可能性があるそうだ。
「実刑判決が出るなどして、最高裁に行っても計2年で確定」
1審の判決については、若狭弁護士は、「有罪になると思います」との見通しを示したうえで、こう指摘した。
「示談ができていないなら、禁錮3年ぐらいの実刑判決が出るでしょうね。もし示談ができているとすると、その内容によりますが、禁錮3年に執行猶予3年が付く、などになる可能性もあります」
裁判については、「そんなに長期化しない」とみる。
「警察や検察は、弁護側の主張をあらかじめ知っていて、客観的な捜査を尽くしているはずです。争点は、アクセルやブレーキの異常ですが、裁判を見ますと、客観的に異常がないことを検察が明示していましたので、防犯カメラの映像などの証拠はあるはずだと思います。弁護側は、車にどういう欠陥があったか立証義務はありませんので、検察側の主張が正しいか、裁判官が判断することになります」
そのうえで、裁判が何年かかるかの見通しについて、こう言う。
「複雑な事件ではありませんので、1審判決は、来年3月ぐらいまでには出る可能性があります。また、高裁になっても、1年以内には判決が出ると思います。上告理由が見当たりませんので、上告しても棄却になる可能性があり、最高裁で半年かかるとしても、再来年の秋までには判決が確定しているでしょう」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)