お笑いコンビ・トレンディエンジェルの斎藤司さんが、フジテレビのバラエティー番組「でんじろうのTHE実験」のロケ中にケガをしたと発表された。背骨を圧迫骨折する重傷を負ったと報じられている。
昨年は俳優の佐野史郎さんがバラエティー番組の実験企画で腰の骨を折る重傷を負った。タレントに「身体を張った芸」を求める番組のスタンスに疑問の声も出る中で、有識者は「制作側は『事故が起こるリスクがある』ということに常に向き合った上で、番組を作っていかなければいけない」と語る。
でんじろう氏監修の実験ではなかった
斎藤さんは「でんじろうのTHE実験」の実験ロケで2020年10月8日に群馬県を訪れていた。「でんじろうのTHE実験」はサイエンスプロデューサーの米村でんじろう氏の冠番組で、お笑い芸人などが身体を張った大掛かりな実験に挑戦することで知られていた。19年2月から放送を開始し、今月30日にも放送が予定されている。
実験は斎藤さんのお尻の下にエアバッグを敷き、エアバッグを急に膨らませると斎藤さんが宙に浮くのかを試すものだったという。斎藤さんは着地時に腰を強打し、背骨の圧迫骨折などの重傷を負ったとしている。
9月2日に第2子が誕生したばかりの斎藤さん。今後は休養をせず仕事を続ける意思が伝えられているが、ツイッター上では「無理せずしっかり休んで」「順調な回復を願います」と気遣う声も聞かれている。
フジテレビは番組公式サイトで「斎藤さんをはじめ、関係者の皆様に心よりお詫び申し上げます。また、今後の治療等につきましては誠意を持って対応してまいりたいと考えております」とコメント。また、今回の実験は米村氏監修のものではなかったとし、「斎藤さんが負傷された事態を重く受け止めております。二度とこのような事故が起きないよう、より一層、番組制作において安全対策に万全を期して参ります」とした。
1年前には佐野史郎が「ガキ使」で骨折
タレントが「実験企画」で大怪我を負う事例は、昨年も発生している。俳優の佐野史郎さんは、19年11月に年末特番「ガキの使いやあらへんで!大晦日SP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!」(日本テレビ系)の撮影中、腰の骨を折る重傷を負った。佐野さんはこのとき、液体窒素入りのペットボトルを用いた実験企画に挑戦していたという。佐野さんの実験の様子は、番組では放送されなかった。
また斎藤さんや佐野さんのような「実験」ではないものの、19年9月にはお笑いトリオ・ネルソンズの青山フォール勝ちさんがTBSのバラエティー番組「笑いが無理なら体張れ」の収録で右肩甲骨関節窩(かんせつか)を骨折。19年5月にはお笑いコンビ・ANZEN漫才のみやぞんさんが「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)で火の輪くぐりに挑戦した際、左足首を骨折している。
ツイッター上では、今回の事態を受け、タレントに「身体を張った芸」を求めるテレビ制作の現場に対して「業界は学ばないのか」「いい加減スタントマンでもない人にこういうのはやめたほうがいい」「『芸人=体を張る』じゃなくてもいいんじゃないかな?」と厳しい声が聞かれている。
有識者は番組の「視覚的な変化」を指摘
J-CASTニュースは20年10月9日、日本のお笑い文化に詳しい江戸川大学の西条昇教授に取材した。西条教授はバラエティー番組における「身体を張った芸」の視覚的な変化を挙げつつ、以下のように指摘した。
「かつて『逆バンジー』などを行っていた『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』(89年〜96年、日本テレビ系)が放送され、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんらがバリバリに身体を張っていた頃と比べると、昨年の佐野史郎さんや今回の斎藤さんが挑んだ実験は、一見それほど危険そうには見えないかもしれない。それでも、タレントが怪我を負うリスクは変わらず潜んでいた」
「もし、今回のような事故が起きず普通に放送されていれば、視聴者がその危険性に気づくことはなかったのではないか。今回のようなことが起きたからこそ、『芸人が危険な目にあっている』という指摘も多く生まれたと思う」
今回の実験について番組側は、制作スタッフがシミュレーションを重ねるなどさまざまな安全対策を講じていたものの、結果として安全対策が行き届いていなかった、と公式サイト上で伝えている。
西条教授も「スタッフによるシミュレーションでは問題がなくても、本番で事故が起こる可能性は否定できない」としつつ、「制作側は『事故が起こるリスクがある』ということに常に向き合った上で、番組を作っていかなければいけない。芸人は番組を信頼しているからこそ、危険な仕事を受けている。その信頼に応えていく必要がある」と語った。