福島県南相馬市の「みちのく鹿島球場」で行われたプロ野球・独立リーグの試合中に、球場のフェンスを「黒いペン」で塗っていた人物がいたという目撃報告が波紋を呼んでいる。
当時、間近で「黒塗り」行為を見ていた観客は「選手達が活躍する大事な球場を自分勝手な理由で汚すのは許せません」と語る。ただ、南相馬市は黒塗りを行った人物を特定し、フェンスも元の状態に戻されたことから、事態は解決済みとの姿勢を示している。
「フェンス越しの撮影」に効果か
「みちのく鹿島球場」は南相馬市にある収容人数3000人の野球場。市の施設だが、指定管理者は特定非営利活動法人かしま元気スポーツクラブだ。ここで2020年10月3日、ベースボールチャレンジリーグ(BCリーグ)の福島レッドホープス対新潟アルビレックスベースボールクラブのデーゲームが開催されていた。
しかし、試合中にメディア関係者であることを証明する「メディアパス」を身につけ、カメラを抱えた人物が、スタンド最前にある緑色のフェンスの一部を黒いペンで塗っていたという目撃報告がツイッター上で拡散された。カメラ愛好家の間では、フェンスを黒く塗ることで、フェンス越しに被写体を撮りやすくなる効果などが指摘されている。
J-CASTニュースが5日、ホームチームの福島レッドホープスの担当者に取材すると、3日の試合では地元紙などのメディアが4社程度訪れていたという。そして7日、現地で試合を見ていた観客の1人に、当時の様子について話を聞くことができた。
試合終了後も「黒塗り」消されず
観客によれば、1回表の最中にこの人物が一塁側スタンドでフェンスを「黒いペン」で塗っているのを目撃。所属社を示す腕章は確認できなかったという。また、すぐ近くには腕章をつけた地元紙の記者がいたため、「この人も(隣の人物が)塗っているのはわかっていたのではないか」と語る。
不審に思った観客は、5回裏終了後に球場にいたスタッフに事態を報告。しかし、「(スタッフは)苦笑いをしていて、特に対応してはいただけませんでした。現場を見に来た様子もなかったように思います」と振り返る。
フェンスを塗った人物は試合後、試合に勝利した福島・岩村明憲監督の囲み取材にも参加していたという。観客は試合終了後の17時30分頃まで球場に居たというが、その時点でもフェンスの「黒塗り」は消されていなかったとした。
取材に応じた観客は「独立リーグの選手は厳しい環境の中、死に物狂いでプレーしており、選手達が活躍する大事な球場を自分勝手な理由で汚すのは許せません。自分も下手くそながら球場で写真を撮ることもあるので、余計に悲しく思います」とやり場のない思いを語った。
南相馬市「施設が元に戻れば、問題になる部分ではない」
J-CASTニュースが南相馬市スポーツ推進課に取材すると、10月5日に事態を把握した市は調査を実施。黒塗りを行った人物を特定できたことから、この人物に「元に戻すように」と伝えたところ、7日にフェンスの黒塗りを「消した」という報告を受けたという。現在、球場の黒塗りは元に戻ったとしている。
市はこの人物がメディア関係者かどうかについては「発表を控えさせていただく」と回答。今回の問題についても「施設が元に戻れば、問題になる部分ではないと捉えている」と、事態は解決済みとの姿勢を示した。