「せめて姿は、この遺影で連れてきてあげたいという思い」
真菜さんと莉子ちゃんが2人で写ったこの遺影はもともと、松永さんの父の誕生日に撮影したものだった。2人は艶やかな和服に身を包み、微笑んでいる。松永さんは写真の思い出を正確な日付とともに、こう語っている。
「2018年12月25日、私の父の誕生日で、『家族写真撮ったことないね』という話になりました。せっかくだからと、私の両親と真菜と莉子で撮りに行きました。この時はまさか遺影になるとは思っていなかった。事故後、急遽遺影を選ばなくてならなくなった時、晴れ着の綺麗な格好をしている写真にしてあげようと、この写真を選びました。遺族にとって遺影というのは...私は亡くなった2人の代わりにお義父さんと私で(裁判に)出ます。声は、2人の代わりに私たちが出します。だからせめて姿は、この遺影で連れてきてあげたいという思いでした」
J-CASTニュースが8日、東京地裁に、今回なぜ被害者参加人が遺影を持ち込むことが認められなかったのかについて取材したところ、広報の担当者は「裁判官の考え方であり、裁判官の総合的な考慮にもとづく判断で決まってくる、としか申し上げられない。遺影の持ち込みについて具体的な条文があるわけではない」とのことだった。
事故発生後の報道などを総合すると、飯塚被告は事故で重傷を負い約1か月入院。警視庁は逮捕せずに任意で捜査を続け、19年11月に起訴を求める「厳重処分」の意見をつけて書類送検した。東京地検は20年2月に在宅起訴。10月8日の初公判では遺族に謝罪したものの、「車に何らかの異常が起きた」として起訴内容を否認した。
なお、「遺影のバー内への持ち込み」についてはかねて議論が交わされている。法務省が13~14年に開いた、有識者の意見を聞く「平成19年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会」第7回の議事では、同会構成員だった高橋弁護士がこの論点を取り上げた。「これは恐らくかなり見解が分かれるところであると思う」との声もあり、多くの構成員から賛否さまざまな意見があがっていた。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)