「どちらかを選択しないといけないのは本当に大変難しいものでした」
今回、遺影があることによる被告人への影響という観点が告げられたわけではなく、あくまで理由として説明されたのは「在廷扱い」だけだったという。高橋弁護士は「これまで、同じ形で遺影の持ち込みを求めて断られたことはありません。今回が初めてです」と話している。最終的には松永さんの母が被害者参加制度を使わず、一般人としてC席で傍聴し、遺影を持った。
松永さんも「遺影の持ち込み禁止」について、「法的知識がないものですから『こういうものなのか』と受け入れるしかなかったのですが、親族でよくよく考えたら『なんでだろう、おかしい』という話になりました」とした上で、複雑な葛藤があったことを明かした。
「法律に関して無知がゆえに、ここで自分たちが声をあげたら、もしかしたら裁判が不利になってしまうんじゃないかという思いもあって、悩みました。それでも、自分がこういった時に声をあげないと、今後も不必要に同じような思いをして苦しむ方が出てしまうのではないかと思い、上申書を提出ました。ですが、残念ながら認められませんでした。
私たち遺族としては、被害者参加制度を使って裁判に参加することは大事なことです。もう一方で、遺影と一緒に、亡くなった2人とともに裁判に参加したいんだという思いも、比べることができないくらい、同じくらい大事なことです。そのどちらかを選択しないといけないのは本当に大変難しいものでした。今後も在廷権を有したまま、傍聴席で遺影をもてるように、裁判所側に言い続けていきたいと思っています」
会見に出席した上谷さくら弁護士も「そもそもバーの中に遺影を持ち込んではいけないという法律はない」としている。
「被告人に心理的プレッシャーを与えると言われますが、自分の大事な人を亡くした張本人を目の前にする遺族のプレッシャーに比べたら、そんなに尊重すべきものなのかとそもそも思います。犯罪被害者等基本法には、被害者等の尊厳を守らなければいけないとしています。それに則って判断してもらいたい。今後も認められるまで毎回申し入れを続ける予定です」