日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は2020年10月7日の記者会見で、地域活性化への取り組みなどを進める「地域事業本部」を立ち上げることを発表した。航空事業に大きく依存することに、元々「非常に大きなリスク」(赤坂氏)を抱える中で、新型コロナウイルスの感染拡大で大幅に需要が落ち込み、多角化を後押しすることになった。
赤坂氏が特に強調したのが、無人飛行のドローンなどに代表される「エアモビリティ」の「運航管理プラットフォーム」の提供だ。長年にわたって培った「誰でもできるものではない」(同)安全運航のノウハウを事業化してサービスとして売り出したい考えだ。
「運航機関」ではなく「運航管理プラットフォーム」に「一番可能性がある」
JALが力を入れることにしている「地域事業」は、これまでに取り組んできたものを含めて、「観光」「人材育成」「2次交通・物流」「環境」「医療」「インバウンド」の6分野。特に赤坂氏が強調したのは「2次交通・物流」の分野で、この中にエアモビリティが含まれる。エアモビリティでは、大きくモノを運ぶ「ドローン物流」と、人を運ぶ「空飛ぶクルマ」の2つの分野で実証実験や研究を進めており、赤坂氏は事業化の方向性について
「こういったものをどのように事業化していくかについて研究している。いわゆる輸送機関としてやっていくという考え方もあるが、一番可能性があるのは運航管理プラットフォームなのではないか」
などと語った。「運航管理」とは、大型機の運航を例に取ると、(1)出発前に天候や運航ルートをパイロットの提供(2)飛行中にパイロットに情報提供(3)モビリティの動態管理(位置・高度など)、などを指すという。このノウハウを事業化する意義を、赤坂氏は次のように強調した。
「こういうエアモビリティを実用化、商用化するために一番大事なのは安全性。そういう意味ではランダム(な運航)というのは航空輸送ではあり得ないので、そういうものを秩序だって運航していくというような、そういう仕組みが必要になってくる。もちろん、管制という仕組みはあるが、その他には運航管理という世界がある。これは誰でもできるものではない。我が国のエアモビリティを使っていく中で、誰かがやっていかなければならない、ということになるだろうと思う。そういうものを我々のノウハウを活用して事業化を進めていき、エアモビリティをどんどん使えるような社会を作っていきたい」
あくまで主体は航空事業、エアモビリティは「航空事業を支える地域を元気にするためのツール」
ドローンの運航をめぐっては、KDDIや楽天といった競合も多い。この点については、赤坂氏は
「確かに通信会社は、技術的な面ではそういうことが非常に長けていると思うが、我々、実際に運航管理をやっている立場からすると、全くそれだけでは足らない世界がある。どちらかと言えばソフト的なところだ」
などと話した。
赤坂氏は、地域事業を非航空事業の柱として位置づけており、今後4~5年をかけて年に1000億円を売り上げる程度の事業規模に育てたい考え。なお、20年3月期のJALの売上高(連結ベース)は1兆4112億円で、そのうち国際旅客が4762億円、国内旅客が5146億円、国際・国内貨物が916億円。引き続き主力は航空事業で、エアモビリティは
「地域活性化において、大きな、重要な要素になる」
「航空事業を支えるような地域の活性化、地域の二次交通に活用していく。それ(エアモビリティ)自体が目的というより、航空事業を支える地域をなんとか元気にするためのツールとしてエアモビリティは有効」
と位置づける。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)