株主総会「集計ミス」問題やまぬ波紋 デジタル化の遅れも露わになった

「『凡ミス』で市場への不信がじわじわ広がるのが怖い」

   こうした誤った処理がされてきた背景にあるのが、株主総会の集中だ。3月期決算企業の総会は、2020年の場合、6月26日に32.8%が集中し、その週(21~27日)では8割近くに達する。基準日(決算期末)から「3か月以内」と決められているからだが、かつては「総会屋の勢力を分散させるために集中させた」と言われた。また、長らく日本特有の株式持ち合いが続き、銀行、生命保険、企業グループの兄弟会社など安定株主を確保していて、仮に一部の議決権が集計できなくても、大勢に影響ない、という株主総会の形骸化が著しかったという事情もある。

   今回の事態は、図らずも日本社会の電子化の遅れも露呈させた。経済産業省によると、米英では機関投資家の議決権の9割超が電子的に行使されるのに対し、日本は2017年時点で機関投資家でも14%、個人株主ではわずか2.5%にとどまり、8割以上が郵送による紙での行使だという。

   東京証券取引所などが出資するICJ(東京)が議決権行使システムを運営しているが、手数料負担の問題もあって、参加する上場企業は約1100社、国内の機関投資家は約30社程度にとどまる。デジタル化促進という政府の方針を受けるまでもなく、議決権行使の電子化促進は待ったなしだ。

   ある東証関係者は「今回の議決権問題だけで日本市場への信頼が根底から揺らぐことはないだろうが、東証のシステム停止(10月1日)も含め『凡ミス』で市場への不信がじわじわ広がるのが怖い」と警戒している。

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