エイチ・アイ・エス「揺れる株価」が映す旅行業界の不透明感

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   旅行代理店大手エイチ・アイ・エス(HIS)の株価が足元で乱高下している。新型コロナウイルスによって逆風下の旅行業界ではあるが、自民党の二階俊博幹事長ら政権上層部の後押しで、強力な支援体制が整ったことで最悪期は脱した、との見方も出ている。しかし海外を含む本格回復までの道のりは遠い、との指摘も根強く、強気・弱気が交錯しており、先行きを見通しにくい。

   9月28日の東京株式市場でHIS株は一時前週末終値比8.7%(153円)高の1920円まで上昇した。朝方には5.0%(89円)安の1678円まで下落したものの見直し買いが入って一転して急伸した格好だ。

  • 株価が映し出す業界の今後(イメージ)
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売り上げ半減の「惨状」ながら...

   材料は前週末9月25日発表の2020年10月期連結決算の業績予想だ。コロナの影響を読み切れずこれまで「未定」としていたが、2019年11月~2020年7月の連結決算の実績とともに公表した。

   通期残すところ約1カ月という時点でようやく出てきた業績予想は、純損益が318億円の赤字(前期は122億円の黒字)に転落すると見込む。2002年の上場以来、初の最終赤字だ。売上高は前期比47.6%減の4240億円とほぼ半減の惨状。営業損益は367億円の赤字(前期は175億円の黒字)に陥る。

   投資家の嫌気が増したのは、同様に未定としていた配当予想の公表であったろう。前期の年33円から無配(0円)となる。この点についてHISは「深くおわび申し上げますとともに可能な限り早期に復配ができるよう努めてまいります」と陳謝するしかなかった。

   週明け9月28日の東京株式市場では、大方の予想通りに取引開始からこの悪材料を受けて売りが先行した。ただ、「ふたをあけてみれば売上高半減なのに赤字はその程度か」と受け止める投資家もいたようだ。「GoToキャンペーン」に10月1日から東京都発着が加わる直前でもあり、手の込んだ政府の旅行業界救済策への期待感も後押しし、株価を押し上げた。

当面続きそうな不安定な展開

   実は業績予想の発表の少し前、みずほ証券が9月23日付リポートで投資判断を3段階で最上位の「買い」から真ん中の「中立」に格下げし、目標株価を4500円から2000円に一気に引き下げた。これを受けて24日の東京株式市場で一時前日終値比7.6%安まで下げる場面があった。証券会社の投資判断格下げは最近では、SMBC日興証券が9月7日付でやはり3段階の最上位から真ん中にした例もあった。ただ、春先から証券各社で相次いだ格下げもここらで打ち止めではないか、という感じがないわけでもなかった。そうしたことも28日の株価急伸につながった可能性がある。

   しかし、週明け10月5日には一時前週末終値比5.6%(103円)安の1742円まで下げた。これは前週末に第三者割当増資や新株予約権の発行で約220億円を調達すると発表したことが材料になった。資本増強によって財務体質が強化され、新たな投資を行うことも可能になる。しかし、1株当たりの利益は希薄化するため既存株主にとってはあまり良い話ではない。「GoToキャンペーン」で国内需要は底上げされるが、海外旅行の見通しが立たないことも改めて意識されたようだ。

   ただ、5日の終値は1.7%(32円)安の1813円まで持ち直した。資本増強の良い面を見直す動きもあり、まさに強気弱気が交錯。当面、株価は不安定な展開となりそうだ。

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