JR東日本の株価がここしばらく芳しくない。
これまで「未定」としていた2021年3月期連結決算の業績予想を2020年9月16日に発表したが、翌17日には失望売りを呼んだ。その後やや持ち直したものの、10月2日の終値は6318円と、さらに下落している。
鉄道運輸収入は41.3%減
まずは業績予想の内容を見てみよう。純損益は4180億円の赤字(前期は1984億円の黒字)に転落する見通し。国鉄分割民営化以降、通期で初の赤字となる。赤字とは思われていた(事前の市場予想の平均は2491億円の赤字)が、これほどまでに巨額かと市場にネガティブサプライズを与えた。売上高は前期比34.5%減の1兆9300億円、営業損益は5000億円の赤字(前期は3808億円の黒字)を見込んだ。赤字だからやむを得ないとはいえ、年間配当予想を前期(165円)から大幅減額して100円としたことも失望に拍車をかけたようだ。
もう少し詳しくみると、売上高のうち主力の鉄道運輸収入は41.3%減の1兆1700億円を見込む。流通・サービスの25.3%減、不動産・ホテルの12.5%減と比べても需要蒸発の度合いが高い。緊急事態宣言下のガラガラ電車状態は脱しているがその後の状況なども踏まえ、本格的な回復はまだ先と判断しているようだ。期待していた売り上げが思うように立たないとなると、重い固定費負担が赤字に化けてしまう鉄道のような「装置産業」には厳しい展開と言える。
JR東日本は2021年3月期の業績予想に合わせて発表した資料で2021年6月までの鉄道運輸収入の月ごとの見通しも示した。それによると、定期券以外の収入は関東圏の在来線で2021年3月にコロナ前の20%減、新幹線は45%減。6月には在来線15%減、新幹線が20%減とした。定期券の収入は2020年度末に15%減の水準でその後は同じ水準で推移するとした。
単なるコスト削減ではもはや?
新幹線の回復が急のようにも見えるが、全体としてコロナ前には戻れないと判断しているのだ。少なくともインバウンド(訪日外国人)の回復は見込めそうもないから当然だろう。ちなみに2020年3月期の実績(単体)の鉄道運輸収入は定期外が1兆2833億円、定期が5094億円と定期外の方が多い。
今回のJR東日本の業績予想について野村証券はリポートで「厳しい前提で会社計画が策定された印象」と堅めの見積もりだとの見方を示した。ただ、「ウィズコロナ」の現実がだんだん見えてきたことを示していると受け止めた投資家の多くが売りに回ったとみられる。そうである以上、終電繰り上げなどでコスト削減に励むだけでは済まず、運賃値上げも現実味を帯びてくると言えそうだ。