菅義偉内閣の閣僚21人が2018年に計約20億円の政治資金を集め、その6割が献金者の報告義務が緩い政治資金パーティーなど「事業収入」だったことが、J-CASTニュースの調べでわかった。菅内閣の閣僚は長いキャリア・実績に加えて知名度も高く、パーティーを開けば「集客力」も高い。一方でパーティーによる集金の低い「透明度」が課題となっている。
21人のうち最多だったのは約2億2844万円を集めた麻生太郎・副総理兼財務相だ。麻生氏は全体の72%の約1億6433万円をパーティーで集めていた。諸経費を差し引いて約1億4491万円の「利益」を得ていた。パーティー券の購入者は10%に過ぎない1613万円分しか記載されていなかった。
パーティー券の匿名性は「政治とカネ」最大の課題
菅首相の場合、18年の収入の73%にあたる約8293万円をパーティーが占めた。2つの政治団体で計11回開いたが、諸経費を差し引いて約6917万円の「利益」を上げていた。パーティー券の購入者名は全く記載されていない。
政治資金規正法では、1回のパーティーで1個人または1法人が20万円を超えるパーティー券を購入した場合、政治家側の政治資金収支報告書に購入者の氏名と住所、金額を記載する必要がある。通常の企業・団体献金や個人献金では年5万円以上で氏名などの記載義務があるのに比べて基準が緩い。このため、献金の事実が公になることを嫌う個人・法人が、20万円以下でパーティー券を購入するケースが多いとされる。
「最近はどこの企業も、『政治家に何か頼み事をしたのでは』などと勘ぐられるのを嫌がるので、企業献金より名前が出ないパーティー券購入という形で支援してもらうことがほとんどです。たいていは1社20万円以内に収まるように買ってもらうか、20万円を超える場合は関連会社の名義にしたり、個人の名義で買ってもらったりしています」(閣僚経験がある自民党議員の秘書)
政治資金に詳しい日本大学法学部の岩井奉信教授は問題点をこう指摘する。
「閣僚歴が長いベテラン政治家になると影響力も大きく、パーティー券による集金額も大きくなる傾向があります。ただ、政治資金パーティーは資金提供者の匿名性が高く、寄付が禁止されている赤字企業や外国企業、政治家への口利きの見返りにカネを払おうとする不心得な企業が含まれていても、検証できないという問題があります。これは『政治とカネ』に関して近年最大の課題であり、菅政権は率先して制度の改革に向き合うべきです」
1回の収入が1千万円以上の「特定パーティー」は21人中16人が開いていた。うち麻生氏、茂木敏充・外相、河野太郎・行政改革担当相の3人は開催当時、閣僚を務めていた。大臣規範では「国民の疑惑を招きかねないような大規模パーティー」の自粛を求めているが、その趣旨に反するとの指摘がある。
河野氏はこの点について問われた19年10月の記者会見で、「閣僚になる以前から続いているものを同じ程度で行うので問題ない」と述べている。