かつて日本で注目を集めた黒船企業「グルーポン・ジャパン」(東京都千代田区)が2020年9月28日、日本市場からの撤退を発表した。
同社は、当時目新しかった「クーポン共同購入サイト」にいち早く参入し、確固たる地位を築いたかに見えた。
しかし「おせち騒動」など業界内でトラブルが絶えず、近年は下火となっていた。
フラッシュマーケティングが注目
グルーポンは08年に米国で創業。期間限定で一定の人数が集まった場合に限り、大幅割引や特典付きのクーポンを一定数量販売する「クーポン共同購入サイト」が大成功し、新市場を開拓した。
この手法は「フラッシュマーケティング」と呼ばれた。消費者に焦燥感を与えて、購入意欲を高められるばかりか、消費者が共同購入者をSNS上で募ってくれるため、口コミが自然と広がりやすい利点があった。
11年には米ナスダックに当時のレートで時価総額1兆円を超える大型上場を果たし、その前年には日本にも参入した。同様のコンセプトのサイト「Q:pod(クーポッド)」を買収する形でグルーポンブランドを展開する。
日本では、グルーポンを筆頭に、クーポン共同購入サイトが続々と立ち上がり、全盛期には300ものサイトが乱立した。IT企業「エンタ」の調査によれば、2012年の推定市場規模は約356億円だったのに対し、翌年は約396億円と急成長。グルーポンとリクルートグループの「ポンパレ」が2強をなした。
トラブルが相次ぐ
共同購入型クーポンという新しい購買行動が定着するかに見えたが、業界内ではトラブルが頻発し、しだいに消費者の不信感が高まっていく。
グルーポンは2010年末に、定価の半額である1万500円で「おせち」を販売した。しかし、購入者から「中身がスカスカ」「食品に傷みがある」などと苦情が相次ぎ、使用食材の偽装も発覚した。グルーポン側は問題を起こした出店業者の事情をきちんと把握しておらず、対応のマズさも指摘された。
11年2月には、東京・吉祥寺のたい焼き店が、偽造されたクーポンを使用されたと訴え、騒動になった(グルーポン側は「重複利用があった」と否定)。
「ポンパレ」でも、通常価格が他サイトと異なっていたり、商品が予定日までに届かず返金となったりとトラブルが頻発した。
こうした背景もあり、クーポン共同購入サイトは次第に姿を消していった。ポンパレも17年にクーポン販売を終了し、KDDIグループの「LUXA」やGMOグループのくまポンなど数少ないプレーヤーで残存者利益を得ていた。
「徹底した市場分析の結果を踏まえ...」
グルーポンもついに幕を下ろした。2020年9月28日に日本市場からの撤退を発表した。
決算公告や調査会社のデータによれば、17年12月期の売り上げは約65億6000万円、当期純利益は約8700万円だったものの、純資産合計は94億1000万のマイナスと債務超過に陥っていた。
同社は公式ブログで、取引先向けに「このたびの決定は私どもにとりましても大変に重く、辛いもの」と断腸の思いでの決断だったと説明し、ユーザーにはメールで「徹底した市場分析の結果を踏まえ、弊社は日本市場からの撤退を決定いたしました」と伝えた。
すでにクーポンの販売を終了しており、有効期限内の未使用クーポンは20年12月27日までしか使用できない。それ以降のクーポンは12月27日が有効期限となり、返金にも応じる。
今回の発表にSNS上では「グルーポン、おせちのイメージしかない...」「グルーポンはおせちが致命的だったよなぁ」と過去の騒動を思い出す人が少なくなかった。