子どもにとってピッタリな列車
ここで、子ども目線――さらにいえば、子どもとともに旅行する保護者の目線から「WEST EXPRESS銀河」の存在価値について考えてみたい。
関西から島根県は子どもだけでなく、大人にとっても「遠い」と認識するのではないだろうか。最も安価な公共交通機関は高速バスとなり、大阪から出雲市までの運賃は4000円台~6000円台となる。ただし大阪から出雲市までの所要時間は約5時間30分、夜行バスになると約8時間にもなり、車内で自由に移動できないことを考慮すると子どもにはつらい旅だろう。
鉄道だと一般的なのは山陽新幹線で岡山駅まで行き、岡山駅から特急「やくも」に乗り、松江駅・出雲市駅方面へと向かうルートだ。しかし、乗り物酔いする子どもにとって特急「やくも」が難敵だ。特急「やくも」に使われる車両は旧国鉄時代に製造され、カーブでも高速通過ができる自然振り子式を採用している。カーブ時に車体が傾いてから直線で元に戻る度に、「ムカムカ」が乗り物酔いする子どもに襲い掛かる。私も小学校のときに特急「やくも」に乗ったが、乗り物酔いするのが怖くて「とにかく寝たい」と思ったことを鮮明に覚えている。
最も速いのは飛行機だが、大阪(伊丹)空港までのアクセスや搭乗等にかかる手間を考える必要がある。
そのように考えると子どもにとって最も良い交通機関は「WEST EXPRESS銀河」ではないだろうか。夜行列車のため時間効率がよく、何より体を横にできるのがいい。また「WEST EXPRESS銀河」に使われる車両は振り子式車両ではないため、特急「やくも」よりも乗り物酔いする確率は低いだろう。新大阪、大阪、三ノ宮、神戸、西明石(下りのみ)、姫路(下りのみ)とこまめに停車する点も同列車の強みといえる。
(フリーライター 新田浩之)