対外発信の朝鮮中央通信、国民が読む労働新聞
だが、北朝鮮側は謝罪だけでは終わらなかった。9月27日には朝鮮中央通信が「南朝鮮当局に警告する」と題した記事を配信。韓国側が北朝鮮側の海域に侵入したとして非難する内容だ。
「われわれの海軍の西海艦隊の通報によると、南側ではこの9月25日から多くの艦艇、その他の船舶を捜索作戦と推定される行動に動員して、わが側の水域に侵入させており、このような南側の行動はわれわれの当然の警戒心を誘発し、また1つの忌まわしい事件を予告している。われわれは、南側が自分の領海でいかなる捜索作戦を行おうが意に介さない。
しかし、わが側の領海への侵入は絶対に見過ごせず、これに対して厳重に警告する」
朝鮮中央通信の記事は労働新聞に転載されることも多い。労働新聞のウェブサイトで確認できる限りでは、9月27日に3本、9月28日には「金徳訓内閣総理が黄海南道の農業部門の活動を視察」など6本の記事が朝鮮中央通信から掲載された。だが、この9本の中に韓国への「警告」の記事は含まれていない。朝鮮中央テレビでも、27日夜~28日夕方のニュースでは台風の被災地の復旧活動に関する話題が中心で、韓国への「警告」のニュースは取り上げられなかった。朝鮮中央通信は、主に対外発信用のメディアとして位置づけられているのに対して、労働新聞や朝鮮中央テレビは、北朝鮮国民が直接目にすることが知られている。
朝鮮中央通信の「警告」記事では、韓国側を非難する前提として、事件について
「去る25日、われわれは現在の北と南の関係局面であってはならない忌まわしい事件が起きたことに対し、事件のてん末を調査して南側に通知した。そして、最高指導部の意図通りに、北と南の間の信頼と尊重の関係が傷つけられるようなことがいかなる場合にも絶対に再び発生しないよう必要な安全対策を講じた」
などと説明していた。直接的な謝罪表現は含まれていないものの、明らかに北朝鮮側の非を認める内容で、労働新聞に転載することで積極的に国民に知らせることは避けたとみられる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)