各省から権限と予算を引きはがすことに
だが、こうした行政機構改革は決して一筋縄にはいかない。各省から権限と予算を引きはがすことになり、官僚や族議員から激しい抵抗が予想されるからだ。菅首相は政権発足から1週間後の2020年9月23日、全閣僚を集めた「デジタル改革関係閣僚会議」を開き、デジタル庁新設に向けた作業を急ぐよう正式に指示した。マイナンバーカードについても「普及促進を一気に進め、各種給付の迅速化や行政手続きのオンライン化を行う」と述べた。こうしたオンライン化を巡っては、日本の「ハンコ文化」が支障になっているとテレワークの普及に伴って改めて指摘されているが、印鑑の関連業界を地元に抱える自民党議員が中心となった「ハンコ議連」の存在でも分かるように、規制改革を進めるには複雑に絡み合った利害関係を解きほぐす必要がある。
デジタル改革をぶち上げて、行政機構改革と規制改革という困難な課題に着手した菅政権。政権を発足させたばかりで、自民党内で派閥に所属しない菅首相ではあるが、在職が7年8カ月にも及んだ官房長官として中央省庁を操った手練手管と、自民党三役は未経験ながらも政権運営で与党と張り合ったしたたかさを首相としても発揮できれば、安倍政権でも道半ばだった改革を進められるかもしれない。デジタル改革の具体的な中身が出てくるのはこれからで、菅政権の実力が試されている。