人が住む地域での生活支援も試行も... 採算性が課題
一方で課題も残る。
航空法の規制でドローンは地表から150メートル以内を飛行しなければならないことから、飛行経路を山の地形に合わせる必要があることだ。そして、山岳地ならではの、変わりやすい天候に柔軟できる体制づくり、航続距離や無線通信環境、最大積載量など機体の性能向上なども、実用化に向けて越えなければならないハードルだという。
ドローンを使った宅配は山岳地だけでなく、離島などでも実用化が期待されており、様々な試みが始まっている。
楽天と西友は2019年7月から3ヶ月間、神奈川県横須賀市の無人島・猿島で、食品や飲料を海水浴やバーベキューなどで訪れる観光客に向けてドローンで宅配するサービスを試行。猿島にあるバーベキュー場に着陸ポートを設置し、利用客がアプリで商品を注文すると、海を挟んで約1.5キロ離れたスーパーから、ドローンが商品を運んだ。
期間中の毎週木曜日から土曜日にかけて、計90件以上の注文を受けて計450個以上を配送。バーベキューを楽しんでいる最中にドローンで食材が届くなどして、利用者から高い満足度を得られたという。
実際に人が住む離島の生活支援としても、楽天は三重県志摩市の間崎島(人口約70人)で20年1月、約5.4キロ離れた対岸にあるスーパーからドローンで生活物資などを届ける実証実験を行っている。
楽天以外でも、岡山県和気町など産官学でつくる「和気町ドローン物流検証実験協議会」が18年12月と20年3月、町の平野部と山間部の最大約30キロの距離で食料品などを配送する実験を実施。飛行1回につき操作や安全管理に5人程度必要だった人員を、3人程度にまで減らせた一方、初期コストや人件費などから採算を取るのは難しく、配送単独ではビジネスとして難しいことがわかったという。
協議会の事務局を務め、ドローンの操縦を担った民間会社「フューチャー・ディメンション・ドローン・インスティチュート」の担当者は、ほかにも、1度の飛行で運べる配送量が法規制により制限されている点や、安全性を担保するための機器やシステムに対する厳しい審査基準など、様々な課題が浮かび上がったとしている。